飲食店の平均売上はいくらなの?業態別の実態

飲食店の平均売上はいくらなの?業態別の実態 店舗経営
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飲食店の平均売上って、気になりますよね。

「うちの店の売上は普通なのかな?」
「この業態で開業するなら、どれくらいの売上が見込めるんだろう?」って。

僕自身、25年間飲食業界にいて、売上の「平均値」だけ見ても、あんまり意味がないことが分かりました。
でも、目安として知っておくことは絶対に大事です。

物価高で人件費も上がってる今の時代は、数字をしっかり把握することが重要です。

飲食店のカウンター席と忙しく働くスタッフ今回は、飲食店の平均売上について、業態別・立地別・規模別にリアルな数字をお伝えします。単なる平均値だけじでなく、現場で役立つ分析方法もご紹介します。

飲食店の平均売上:1日・1ヶ月・年間の目安

まず、飲食店全体の平均売上ですが、統計によると月間で約845.5万円と言われています。でもこれ、大手チェーン店から個人店まで全部ひっくるめた数字なんで、あんまり参考にならないんですよね。

僕が現場で見てきた感覚だと、

個人経営の飲食店の場合、年間売上は1,000〜2,000万円くらいが多いです。これを月に換算すると83〜167万円、1日だと2.7〜5.5万円くらいになります。

飲食店の売上データを分析する様子でもね、実際には業態や立地、規模によって全然違ってくるんです。例えば、日本フードサービス協会のデータを見ると、業態別の月間平均売上は以下の通りです。これ見ると、ディナーレストランの売上が突出して高いですね。

  • ファストフード:834.5万円
  • ファミリーレストラン:903.6万円
  • 居酒屋:1083.4万円
  • ディナーレストラン:1942.9万円
  • 喫茶店:603.9万円

参考元:日本フードサービス協会

業態別に見る飲食店の売上目安

では、もう少し詳しく業態別の売上目安を見ていきましょう。まずは客単価別に整理するとわかりやすいと思います。

客単価別の1日売上目安

客単価とは、お客様1人あたりの支払い金額のこと。これによって1日の売上目安はこのようになります。

低価格帯(〜1,000円):5万円〜10万円
中価格帯(1,000円〜3,000円):10万円〜20万円
高価格帯(3,000円以上):20万円〜50万円以上

これ見ると、「うちの店、全然売上足りてないじゃん!」って思われる方がいらっしゃるかとは思いますが、焦らないでください。これはあくまで目安であって、立地や規模によって全然変わってきます。

立地別の月間売上目安

立地によっても売上は大きく変わります。特にコロナ禍以降、立地の重要性はさらに高まってると感じます。

繁華街:400万円〜1,000万円以上
オフィス街:300万円〜800万円
住宅街:200万円〜500万円
郊外:150万円〜400万円

立地の力ってすごいなって実感します。同じメニュー、同じサービスでも、駅から5分違うだけで売上が半分以下になることもあるんですね。

最近の調査データを見ると、駅前立地の中小飲食店は、コロナ禍でも比較的影響が少なかったみたいです。特に三大都市圏の主要駅から徒歩4分以内にある店舗は、全国平均と比べて売上の落ち込みが少なかったというデータがあります。

繁華街と住宅街の飲食店の対比

飲食店の売上を分析する方法

売上の平均値を知るのも大事だですが、大事なのは自分の店の売上を分析することです。僕が25年間の現場経験で培った分析方法をシェアします。

来客数×客単価・回転率で考える

飲食店の売上は基本的に「来客数×客単価」で決まります。例えば、30席のお店で1日に90人のお客様がご来店されて、平均3,000円のご利用金額だと、1日の売上は27万円になりますよね。また30席のお店がずっと満席ですとお客様をご案内できません。お店の客席が、一定の営業時間内に、平均して何回お客様に入れ替わったかを示す指標を回転数といいます。

この3つの要素のどれが自分の店の課題なのか、まずはそこを見極めることが大切です。

来客数が少ない:外観・ファサードの問題、Web・SNSでの存在感の欠如、リピーターを増やす
客単価が低い:メニュー構成や追加のおすすめの工夫、サービス力でUP
回転率が悪い:オペレーションや座席レイアウトの見直し、時間のかかるメニューの洗い出し

僕が現場時代に一番力を入れたのは、この3つのバランスを取ることでした。ただ来客数を増やそうとすると客単価が下がったり、客単価を上げようとすると回転率が悪くなったり…そのバランスが難しいんですよね。

POSレジで売上データを確認する様子

来客数を増やす方法

まず来客数を増やすには、認知度を上げることと、リピーターを増やすことの2つが重要です。

「一生懸命、美味しい料理を作っている。でも、なぜかお客様が増えない…」

飲食店の経営者なら、誰もが一度は抱える悩みだと思います。その気持ち、僕も現場にいたから痛いほど分かります。実は、お客様がお店に来てくださるまでには、2つの大きなポイントがあるんです。

「発見」 ~あなたのお店、見つけてもらえてますか?~

どんなに素晴らしい料理を用意していても、まずお客様に「お店の存在を知ってもらう」ことができなければ、何も始まりません。

道行く人は、あなたの店の前を素通りしていませんか? 店の前を通った時、何のお店か一目で分かりますか? 看板はハッキリ見えますか? 入口が暗かったり、中の様子が全く見えなかったりすると、お客様は「営業してるのかな?」「なんだか入りにくいな…」と感じて、入店をためらってしまいます。看板にほこりがたまっていたり、照明が切れていたりするとこのお店なんだかな~って思ってしまいますよね。また、メニューやポスターがやたら掲示されているお店も「飲食店ってことはわかるけど、何屋さんなんだろう?」とコンセプトの不明確さが見えます。
店頭(入口・ファザード)の整理整頓、これはとても重要なことなんです。

また、ネット検索した時、あなたのお店はちゃんと出てきますか? 今の時代では、お客様はご来店前に必ずと言っていいほどスマホで検索します。GoogleマップやInstagram、食べログなどなど。Web上に、魅力的な写真やメニューと共にあなたの店の情報がなければ、残念ながらお客様の選択肢にすら入ることができないのです。更新されていないInstagramも、シャッターが閉まった店と同じ。Web上に存在しない店は、お客様の中にも存在しないんです。

「再来店」~「また来たい」は、どう作る?~

無事にお客様が一度ご来店くださった。本当の勝負はここからです。

新規のお客様を獲得するコストは、既存のお客様(リピーター)を維持するコストの5倍以上かかる、と言われています。つまり、一度来てくださったお客様に、いかに「また来たい!」と思っていただくかが、経営を安定させる上で一番大事なことなんです。

僕が店長時代に大切にしていたのが、お客様一人ひとりを「個」としてお迎えする「パーソナライズ」でした。

例えば、お客様のお名前を覚え、前回のご注文や好きなドリンクを記憶しておくんです。そして、次回ご来店された際に「〇〇様、いらっしゃいませ!いつもの生ビールでよろしいですか?」ってお声がけする。たったこれだけのことですが、お客様は「自分のことを覚えていてくれたんだ!」と、ものすごく喜んでくださるんです。

「その他大勢」のお客様ではなく、「特別なあなた」としてお迎えする。この小さな心遣いの積み重ねが、お客様との間に他のお店にはない太い絆を作り、強力なリピーターになっていただける秘訣です!!

美味しい料理という素晴らしい土台の上に、この「発見」「再来店」という2つの工夫を積み重ねていく。それが、長く地域やお客様に愛される繁盛店への、唯一の道だと僕は信じています。

客単価を上げる方法

「売上を伸ばしたい、でも単純な値上げは気が引ける…」。その気持ち、痛いほど分かります。

客単価アップは、お客様を無理に高いものへ誘導することではありません。お客様の満足度を引き上げることで、結果として「もう一品」「どうせなら良いものを」と自然に選んでいただくことが大事です

「メニュー構成」— “選ぶ楽しさ”と“お得感”の設計

僕が店長時代、一番こだわったのがメニューブックです。お店で一番働く、無口な営業マンなんですよ。

  • 「上中下」の法則で、真ん中を狙う 例えばステーキなら、「①通常ステーキ 2,000円」「②国産牛ステーキ 3,200円」「③黒毛和牛ステーキ 5,800円」という3つの価格帯を用意します。すると、不思議と多くのお客様が真ん中の「②熟成肉ステーキ」を選んでくださるんです。一番安い選択肢を避ける心理が働き、結果として客単価が自然と上がります。※③も全力で払い出す努力も併せてやります笑
  • 「セット」という魔法の言葉 「前菜盛り合わせとデザートが付いて、お好きなメインを選べるセット 3,500円」のようなセットメニューは非常に強力です。お客様は「色々選べてお得!」と感じますが、お店側からすれば、アラカルトで頼んでもらうよりも確実に高い単価を確保できます。

「追加のおすすめ」— “聞く力”と“提案力”

成功の鍵は「売り込む」のではなく、「お客様の食事をより楽しくするお手伝いをする」という姿勢です。

  • 「次の一杯」を最高のものに 「とりあえず生ビール!」とご注文されたお客様が、メニューを眺めながら次に何を飲もうか考えている。その瞬間に、「お次のお飲み物はいかがですか?今日はお肉料理にぴったりの、濃厚な赤ワインもグラスでご用意できますよ」と声をかける。この一言で、生ビールが高単価のワインに変わるかもしれません。
  • 「あと一品」のハードルを下げる 「このおつまみ、ハーフサイズでもご用意できますよ」。この一言があるだけで、「一皿は多いけど、少しだけ食べてみたい」というお客様の背中を押すことができます。結果として、注文点数が増え、客単価アップに繋がります。食後の「デザートとコーヒーはいかがですか?」も、忘れてはならない魔法の言葉です。

「サービス力でUP」— “満足感”が“財布の紐”を緩める

客単価を上げる最も強力な方法は、最高のサービスでお客様に「この店、好きだな」と感じていただくことです。

ある常連様が、僕が異動するときにこう言ってくれました。「岡本くんがいると、話が楽しくて、ついつい長居して飲みすぎちゃうんだよな」。これこそが、サービスによる客単価アップの本質だと思っています。

  • 名前を覚えて、特別感を演出する 「〇〇様、いつものでよろしいですか?」この一言で、お客様は「大切にされている」と感じ、お店への信頼を深めます。信頼できるスタッフから「今日はこれがおすすめです」と言われれば、「じゃあ、それにしようかな」と素直に思ってくださるものです。
  • 心地よい雰囲気を作る スタッフの明るい笑顔、清潔な店内、気の利いたお声がけ。こうした居心地の良さが、お客様の心をリラックスさせ、「もう一杯だけ飲んでいこうかな」という気持ちに繋がります。

回転率を良くする

「お昼時は満席で、外には行列もできている。でも、一日の売上を締めてみると、思ったほど伸びていない…」

もしかしたらお店の「回転率」が原因かもしれません。回転率とは、席がどれだけ効率よくお客様を迎え入れ、売上を生んでいるかを示す大事な指標です。

「オペレーションの見直し」— “スムーズな流れ”が鍵

お客様の満足度を下げてしまう最大の敵は、「無駄な待ち時間」です。これを徹底的に無くすことが、回転率改善の第一歩です。

僕がいた銀座のビヤホールは、多い時で1日に何千人ものお客様がいらっしゃいました。お客様の入店から退店まで、オペレーションの「流れ」を止めない、ということでした。

  • ご案内〜注文: お客様がご来店したら、スムーズに席へご案内。オーダーもタイミングよくお伺いする。
  • 料理提供: キッチンとホールが連携し、正確かつ迅速に。
  • 会計: 手際よくかつ正確に。声出し確認も徹底。
  • 片付け: お客様をお見送り後、即座にテーブルを次のお客様のために完璧な状態にする。

この一連の流れに、どこか詰まっている場所はないか?足りない備品はないか? お客様の目線で自分の店の流れを追ってみてください。人員不足ではない、オペレーションのズレを解決するだけで回転率は一気に上がります。

「座席レイアウトの見直し」— その“席”が回転を邪魔している?

いつも行列ができるのに売上が伸び悩んでいる、というケースがあります。原因は、4名様テーブルばかりで、2名様を大きな席にご案内していたことだったんです。コロナ禍の影響がそのまま残っていたんですよね。

  • 2名席を増やす: 2名様用のテーブルを基本とし、必要に応じてテーブル同士をくっつけて4名席や6名席にする。この「可変式レイアウト」にするだけで、席の案内効率(席効率)は劇的に改善します。
  • カウンター席を活かす: お一人様や二人組のお客様は、比較的滞在時間も短く、回転率を押し上げてくれる大切な存在です。カウンター席を魅力的に演出し、「お一人様も大歓迎」という雰囲気を作りましょう。
  • 店内の空白をさがす:意外と席が増やせるデットスペースがあります。お一人様席や3名様席というイレギュラー席も満席時にはお客様にお断りを入れればご案内できるはずです!

「時間のかかるメニューの洗い出し」— “美味しい”と“早い”の両立

料理人としての考えから、手間暇かけた美味しい料理を提供したい。その気持ちは当然です。

しかし、ランチのピークタイムに調理時間が20分かかるメニューに注文が集中したらどうなるか…? キッチンはパンクし、他のお客様の料理提供も遅れ、店全体が回らなくなります。

  • ピークタイム専用メニューを作る: ランチなど、スピードが求められる時間帯は、提供時間が短いメニューに絞り込む勇気も必要です。また、周辺のイベントなどで通常ではない激流がお店を襲うシーンもあります。効率よくかつお客様満足を下げないメニュー品数の調整も必要不可欠です。
  • 仕込みの工夫で時短する: 調理工程を見直し、「ここまでなら事前に準備(仕込み)しておいても、味は落ちない」というラインを見極める。この地道な工夫が、ピーク時の提供スピードを大きく左右します。

飲食店の売上は「来客数」「客単価」「回転率」という、3つの大きな歯車で動いています。どれか一つだけを回そうとしても、お店はうまく前に進みません。

大切なのは、この3つの歯車のバランスです。

自店の課題がどこにあるのかを正しく見極め、「集客」「単価UP」「効率化」それぞれに的確な一手でアプローチしていく。この地道な繰り返しこそが、長く地域やお客様に愛される繁盛店への、唯一の道だと僕は信じています。

まとめ:自店の分析が成功への近道

飲食店の平均売上を知ることは大切ですが、それ以上に大切なのは自分の店の状況をしっかり分析して、具体的な改善策を見つけることです。

僕が25年間の飲食業界経験で学んだのは、「数字は嘘をつかない」ということ。でも、数字だけ見てても意味がなくて、その背景にある「お客様の気持ち」を理解することが本当に大切なんです。

数字を追いかけるのも大事だけど、最終的にはお客様と店員さんの笑顔があってこそ。その笑顔を作るための道具として、売上分析を活用してください。

今回ご紹介した業態別の平均売上や分析方法が、皆さんのお店の経営改善のヒントになれば嬉しいです。もし具体的な相談があれば、現場目線でアドバイスさせていただきますので、お気軽にevisuの公式ラインまでご連絡ください。

飲食業界は大変な時期が続いていますが、だからこそチャンスもあります。一緒に頑張っていきましょう!

岡本優

飲食業界歴25年/元・銀座ライオン本店 総支配人
現場を知り尽くした、飲食店伴走型パートナー

飲食業界歴25年。国内最大級のビヤホール「銀座ライオン」にアルバイトとして入社後、現場一筋でキャリアを重ね、社員、店長を経て、700席を擁する新宿・銀座ライオン本店の総支配人に就任。
店舗経営、メニュー開発、人材育成まで、マネジメント全般を統括。未曾有のコロナ禍においては、厳しい経営状況も経験しました。
25年間の現場経験のすべてを「飲食業界への恩返し」に注ぎたいと一念発起し、独立。現在は、豊富な店舗運営の経験とベンチャー企業で培った知見を活かし、数字に強い実務型パートナーとして個人飲食店のオーナー様を支援しています。
机上の空論ではない、現場に深く寄り添った改善提案が信条です。オーナー様と共に汗を流し、課題を乗り越える。「楽しくなければ飲食店じゃない!」をモットーに、スタッフが輝き、利益が生まれる店づくりを一緒に全力で伴走します。

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