飲食店経営をやっていて、一番怖いのは異物混入だと思ってる方、多いと思います。
髪の毛が入った、虫が入った、プラスチックの破片が入った——そんなご指摘が入った瞬間、頭が真っ白になって「お店の評判が落ちる」「SNSで拡散される」「もう終わりだ」って思いますよね。
でも、少し考え方を変えてみてください。
実は異物混入は、お店の信頼を「壊す」んじゃなくて「築く」チャンスなんです!
どういうことかっていうと、お客様は異物が入ったことよりも、その後のお店の対応で判断されます。
異物混入はなぜ飲食店の大問題になるのか
まず、異物混入がどれだけ深刻な問題か。
異物混入は単にお客様に不快な思いをさせるだけじゃなくて、最悪の場合は健康被害につながることもあります。金属片やプラスチックの破片なんかだと、口の中や喉を怪我させたり、歯が欠けたりする可能性もあります。
さらに、虫や害獣が混入すると、病原菌や、ウイルスを含んでいることもあって、食中毒の原因になることもあります。
そして、一番のダメージは目に見えないところにあります。
異物混入が起きると、お客様の「このお店は衛生管理ができていないんじゃないか」「他にも問題があるんじゃないか」という不信感につながる。さらに、SNSで拡散されたり、口コミサイトに書かれたりすると、一気に評判が落ちて、売上にも響いてきます。
2025年3月に起きた某チェーンの味噌汁への害獣混入事件は、SNSで大炎上して、結局全国にお店を一時閉店する事態になりました。
異物混入が起きる主な原因と予防策
では、なんで異物混入は起きるのでしょうか。
食品工場でも飲食店でも、主な原因は3つに分けられます。
1.従業員による異物混入
一番多いのは、実は人為的なミスです。
例えば、身だしなみや持ち込み品のルールを守らないと、毛髪やアクセサリー、ボタンやペンなんかが料理に混入することがあります。また、包丁の欠けた刃や、機器から脱落したボルト、清掃ブラシから抜け落ちた毛なども原因になります。
予防策としては、まず従業員教育が大事。
そして、衛生帽子や手袋の正しい着用方法、アクセサリー類の禁止、清掃用具の定期的な交換などをルール化して、徹底することが必要です。
害虫・害獣による異物混入
次に多いのが、ゴキブリやハエなどの害虫や、ネズミなどの害獣が原因の混入。
天井や床面、壁面に破損があったり、窓や扉が開放されていたりすると、害虫や害獣が侵入してきます。さらに整理・整頓が不十分だと、隠れる場所ができて、そこが住みかになってしまう。
予防策としては、定期的な害虫駆除と、侵入経路の封鎖が基本。あとは、厨房内の整理整頓と清掃の徹底も欠かせません。
施設や設備による異物混入
最後に、施設や設備の劣化による異物混入もあります。
古くなった調理器具からの金属片や、天井の塗装の剥がれ、照明カバーの破片なんかが落ちてくることもあります。
予防策としては、定期的な設備点検と、古くなった器具の交換が重要です。
異物混入が起きた時の対応フロー
さて、ここからが本題です。
異物混入が起きた時は、どのように対応するかで、お店の評判が大きく変わってきます。
初動対応:最初の3分が勝負
まず、異物混入の連絡を受けたら、すぐに謝罪することが第一歩。「不快な思いをさせて申し訳ありません」と謝罪します。
そして、お客様の話をよく聞くこと。
どんな異物が、どの料理に、どのように入っていたのか、具体的に聞き取りをしましょう。
次に、問題の料理を新しく作り直すか、別のメニューに変更するか、代金を返金するかなど、お客様の希望に沿った対応をしましょう。
原因究明:再発防止のカギ
初動対応が終わったら、すぐに原因究明に取り掛かります。
異物の種類や特徴から、どこで混入した可能性があるのかを調査する。調理工程の確認、使用した食材や調味料のチェック、調理器具の点検なんかを行います。
原因が特定できたら、すぐに対策を講じること。
例えば、調理器具の破損が原因なら、新しいものに交換する。
従業員の不注意が原因なら、再教育を行う。
害虫が原因なら、駆除と侵入経路の封鎖を行うといった具合です。
どうしても原因が特定できない場合でも、可能性のあるすべての要因に対してすべて対策を講じることが重要です。
異物混入を信頼構築のチャンスに変える方法
私が一番重要に思うこと。
それは異物混入は、お店の評判を落とす「危機」ですが、誠実な対応すれば信頼を高める「機会」にもなる
透明性の確保:隠さない、ごまかさない
まず大事なのは、透明性を持って対応すること。
異物混入が起きたことを隠したり、ごまかしたりすると、後で発覚した時に「隠蔽した」と受け取られて、さらに信頼を失うことになります。
異物混入が起きたら、事実を正直に認めて、原因と対策を明確に説明することが大切です。
お客様は完璧なお店を求めているのではなく、問題が起きた時に誠実に対応してくれるお店を求めています。
誠意ある対応:言葉だけじゃなく行動で示す
次に、誠意ある対応を心がけること。
謝罪の言葉だけじゃなくて、具体的な行動で誠意を示すことが大切。例えば、問題の料理の代金を返金するだけでなく、店長自らが謝罪に伺うなど、一歩踏み込んだ対応が信頼回復につながります。
現場にいた時、お客様のスーツにソースをこぼしてしまったことがあり、クリーニングしたスーツをお客様のご自宅までお届けし、謝罪をしたところ、そのお客様はリピーターになってくれました。
再発防止策の共有:学びを示す
最後に、再発防止策をお客様と共有すること。
異物混入から何を学び、どんな対策を講じたのかを伝えることで、「この店は真剣に改善しようとしている」という印象を与えることができます。
例えば、「今回の件を受けて、全スタッフに衛生管理の再教育を行いました」「調理器具の点検頻度を増やしました」といった具体的な改善策を伝えると、お客様も安心します。
「この店は問題があっても誠実に対応してくれる」という評価につながって、かえって信頼が高まることもあります。
異物混入対策をあなたの経営する飲食店に組み込む方法
異物混入は、起きてから対応するだけじゃなくて、日頃から予防する文化を作ることが大切です。
定期的な研修とチェックリスト
まず、全スタッフに対して定期的な衛生管理研修を行うこと。
「なぜ異物混入が問題なのか」「どうすれば防げるのか」を理解してもらうことが大切です。従業員には入店時にしっかり教育することが必要です。
また、日々の業務の中に、異物混入防止のためのチェックリストを組み込むことも必要です。例えば、調理前の手洗い・身だしなみチェック、調理器具の点検、食材の検品を、毎回確認する習慣にします。
まとめ:異物混入は「終わり」ではなく「始まり」
異物混入は飲食店にとって、とても大きな問題です。しかし「終わり」ではなくて「始まり」だと思います。
お客様は、問題が起きた時に誠実に対応してくれるお店を信頼してくださります。異物混入が起きたら、それを信頼構築のチャンスだと捉えて、透明性を持って誠実に対応することが大切です。
日頃からの予防策も忘れずに。定期的な研修やチェックリストで異物混入のリスクを減らすことができます。異物混入は、その信頼関係を試される瞬間。うまく対応すれば、かえって信頼が深まるチャンスにもなる。
飲食の現場で25年、いろんな問題を乗り越えてきましたが、大事なのは「お客様に対する誠実さ」です。
もし飲食店の運営でお悩みがあれば、ぜひevisuの公式ラインよりご相談ください。25年の現場経験を活かして、あなたのお店の課題解決をサポートします。
岡本優
飲食業界歴25年/元・銀座ライオン本店 総支配人
現場を知り尽くした、飲食店伴走型パートナー
飲食業界歴25年。国内最大級のビヤホール「銀座ライオン」にアルバイトとして入社後、現場一筋でキャリアを重ね、社員、店長を経て、700席を擁する新宿・銀座ライオン本店の総支配人に就任。
店舗経営、メニュー開発、人材育成まで、マネジメント全般を統括。未曾有のコロナ禍においては、厳しい経営状況も経験しました。
25年間の現場経験のすべてを「飲食業界への恩返し」に注ぎたいと一念発起し、独立。現在は、豊富な店舗運営の経験とベンチャー企業で培った知見を活かし、数字に強い実務型パートナーとして個人飲食店のオーナー様を支援しています。
机上の空論ではない、現場に深く寄り添った改善提案が信条です。オーナー様と共に汗を流し、課題を乗り越える。「楽しくなければ飲食店じゃない!」をモットーに、スタッフが輝き、利益が生まれる店づくりを一緒に全力で伴走します。
