飲食店を経営していると、毎日の衛生管理に追われて「もう少し楽にならないかな」と思うことありませんか?
僕は25年間、飲食業界の現場で働いてきました。アルバイトから始まり、バイトリーダー、店長、総支配人と経験する中で、衛生管理の大変さは身にしみています。特に800席以上の大型店舗では、衛生管理の負担は相当なものでした。
でも実は、衛生管理は「簡略化」することで、むしろ売上アップにつながる可能性があるんです。これは矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、現場を知る人間として断言できます。
「でも衛生管理を簡略化して大丈夫なの?」
そんな疑問が浮かぶのは当然です。今日は現場25年の経験から、衛生管理を効率化しながら売上も上げる方法をお伝えします。コロナ前後で大きく変わった飲食業界で、今こそ知っておくべき新常識をこの場をもってお伝えします。
なぜ衛生管理の簡略化が飲食店の売上アップにつながるのか
まず最初に言っておきたいのは、「簡略化」は「手を抜く」ということではないということ。むしろ、効率的に確実な衛生管理を行うことで、他の業務に時間を使えるようになるんです。
銀座や新宿の大型店舗で働いていた時、スタッフが衛生管理に費やす時間は1日の業務の約20%にも及んでいました。この時間を接客や料理の質の向上に使えたら…と常に思っていましたね。
実際、衛生管理の簡略化によって売上がアップする理由は主に3つあります。テーブル回転率の向上、スタッフの生産性アップ、そして何より顧客満足度の向上です。
1.テーブル回転率が上がる
2.スタッフの生産性が向上する
3.顧客満足度が向上する
1.テーブル回転率が上がる
飲食店の売上を決める重要な要素の一つが「回転率」です。特に客単価が中程度の居酒屋などでは、1日2回転が目標とされることが多いですね。
衛生管理を効率化すると、テーブルの清掃時間が短縮され、次のお客様をより早くご案内できるようになります。
- 特にランチタイムの11時45分~13時15分
- ディナータイムの19時~21時30分
といったピーク時間では、この数分の差が大きな売上差につながるんです。
例えば、30席の居酒屋で回転率が2回から2.2回に上がるだけで、1日あたりの客数は60人から66人に増加。客単価3,000円なら、1日18,000円、月にして54万円の売上アップになります。これは現場感覚として、かなり現実的な数字です。
2.スタッフの生産性が向上する
衛生管理に費やす時間が減ると、スタッフは他の業務に集中できるようになります。
「でも衛生管理って手を抜けないでしょ?」
確かにその通りです。でも、効率的な方法を導入することで、同じ衛生レベルを維持しながら時間を短縮できるんです。
例えば、従来の方法では清掃チェックリストの記入だけで1日30分かかっていたものが、デジタル化によって5分で済むようになれば、その25分を接客や料理の質向上に使えます。これが積み重なると、お客様の満足度アップにつながり、リピート率の向上、口コミ効果による新規客の増加が期待できるんです。
3.顧客満足度が向上する
衛生管理の簡略化で最も重要なのは、実は顧客満足度の向上なんです。
僕が飲食業界で働いていた頃、お客様からよく言われたのは「トイレがきれいな店は料理も信頼できる」ということ。これは本当に重要なポイントです。
飲食店のトイレの清潔さは、お店全体の印象を大きく左右します。トイレが不潔だとお店へのイメージが悪くなり、リピート率が低下してしまうんです。
効率的な衛生管理を導入することで、トイレや店内の清潔さを維持しながら、スタッフの負担を減らすことができます。これによって、お客様は「このお店は清潔で安心できる」と感じ、満足度が向上。結果として、リピート率アップや口コミによる新規客増加につながるんです。
HACCP導入で衛生管理を効率化しよう
「HACCP(ハサップ)って聞いたことあるけど、難しそうで…」
多くの飲食店オーナーがそう感じているのは知っています。でも実は、HACCPを正しく理解すれば、衛生管理の効率化につながるんです。
HACCPとは何か?
HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、日本語では「危害要因分析重要管理点」と訳されます。食品の安全を確保するための衛生管理手法です。
2021年6月から、原則としてすべての食品関連事業者にHACCPの導入が義務付けられました。これは大変そうに聞こえますが、実はシンプルな考え方なんです。
従来の衛生管理では、最終製品の抜き取り検査が中心でした。でも、HACCPでは原材料の入荷から製品の出荷までの全工程で、危害要因を管理します。これにより、問題が起きる前に防止できるんです。
小規模飲食店向けの簡易版HACCPとは
「でも、うちは小さな店だから…」
そんな心配は無用です。小規模な飲食店や、提供する食品の種類が多くない店舗については、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」という簡易版が認められています。
この簡易版では、業界団体が作成した手引書に沿って進めれば良いんです。例えば、「小規模な一般飲食店向けHACCP導入の手引書」などがあり、これに沿って自店舗の衛生管理計画を作成できます。
参考元:HACCP ハサップ の考え方に基づく衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)
僕が実際に導入支援した30席ほどの居酒屋では、この簡易版HACCPを導入したことで、日々の衛生管理作業が約30%削減できました。それまでバラバラだった衛生管理の手順が整理され、効率的になったんです。
デジタル化で記録業務を効率化
HACCPの導入で面倒に感じるのが、記録の保存です。でも、これもデジタル化することで大幅に効率化できます。
例えば、冷蔵庫の温度管理。従来は紙のチェックシートに手書きで記録していましたが、今はタブレットやスマホで簡単に記録できるアプリがたくさんあります。中には自動で温度を記録してくれるIoTセンサーもあるんです。
清掃記録も同様です。紙のチェックリストではなく、タブレットで写真付きで記録できるアプリを使えば、保健所の検査時にも証拠として提示できます。
「でも、そんなハイテクなこと、うちのスタッフにできるかな…」
心配無用です。最近のアプリは非常に使いやすく設計されています。むしろ若いスタッフは紙の記録より、デジタルの方が慣れているくらいです。
飲食店の衛生管理を簡略化することで成功した実例
ここからは、実際に衛生管理の簡略化で成功した事例をご紹介します。
ある居酒屋では、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を導入し、デジタル化を進めました。その結果、衛生管理に費やす時間が1日あたり約2時間減少。その時間を接客サービスの向上に充てたところ、お客様の満足度が上がり、3ヶ月で売上が15%アップしたんです。
清掃作業の効率化事例
清掃作業の効率化も大きな成果を上げています。従来は営業終了後に全スタッフで1時間以上かけて清掃していましたが、「重要ポイント集中清掃」という方法に変更しました。
これは、食品安全に直結する重要なポイント(調理器具、食材保管庫、手洗い場など)を特定し、そこに清掃の労力を集中させる方法です。見た目の清潔さも大切ですが、食品安全の観点から本当に重要な箇所を優先するんです。
この方法を導入したお店では、清掃時間が40%削減され、スタッフの残業時間も大幅に減少。労働環境の改善にもつながりました。一度清掃すると、その後の清掃が非常に楽になります。
トイレ衛生管理の改善事例
飲食店のトイレは、お客様の印象を大きく左右する重要なポイントです。ある焼肉店では、トイレの衛生管理を効率化するために、抗菌・防汚コーティングを導入しました。
これにより、日々の清掃が格段に楽になり、それでいて清潔さは向上。トイレにアメニティ(消臭スプレーや綿棒など)も設置したところ、お客様からの評価が上がり、リピート率が向上したんです。
「トイレがきれいだと、料理も美味しく感じる」
これは本当です。トイレの清潔さは、お店全体の印象、ひいては料理の味の評価にまで影響するんです!
今すぐできる衛生管理の簡略化ステップ
「具体的に何から始めればいいの?」という声が聞こえてきそうですね。ここからは、すぐに実践できる衛生管理の簡略化ステップをご紹介します。
ステップ1: 現状の衛生管理を見直す
ステップ2: 重要ポイントを特定する
ステップ3: デジタルツールを導入する
ステップ4: スタッフ全員で共有する
ステップ1: 現状の衛生管理を見直す
まずは、現在の衛生管理作業を洗い出し、どの作業に時間がかかっているかを把握しましょう。例えば、清掃、温度管理、記録作業などです。
僕がよくやるのは、1週間、全ての衛生管理作業を記録してもらうこと。「何の作業に、誰が、どれくらいの時間をかけているか」を可視化するんです。これだけでも、無駄な作業や重複している作業が見えてきます。
「えっ、そんなことに1時間もかかってるの?」という発見があるはずです。
ステップ2: 重要ポイントを特定する
次に、食品安全に直結する重要なポイントを特定します。これがHACCPの考え方の基本です。
例えば、生肉を扱う工程、加熱調理の温度管理、調理済み食品の保管温度などが重要ポイントになります。これらに管理の労力を集中させることで、効率的に食品安全を確保できるんです。
「全てを完璧にしようとするから大変になる」というのが、僕の25年の経験から得た教訓です。重要なポイントに集中することで、効率的に安全を確保できるんです。
ステップ3: デジタルツールを導入する
紙の記録をデジタル化することで、大幅な時間短縮が可能です。今は無料や低コストで使えるアプリもたくさんあります。
例えば、温度管理アプリ、清掃チェックリストアプリ、発注・在庫管理アプリなど。これらを導入することで、記録作業の時間が大幅に削減され、データの管理も容易になります。
「でも、うちは小さな店だから…」と思うかもしれませんが、むしろ小規模店舗ほどデジタル化のメリットは大きいんです。限られた人員で効率的に運営するためには、デジタルツールの活用が不可欠です。
ステップ4: スタッフ全員で共有する
衛生管理の簡略化を成功させるためには、スタッフ全員の理解と協力が必要です。
新しい方法を導入する際は、「なぜこの方法に変更するのか」「どのようなメリットがあるのか」を丁寧に説明しましょう。スタッフが理解していないと、結局は従来の方法に戻ってしまいます。
僕が新宿の店舗で実践したのは、「衛生管理の時間を減らして、その分お客様との会話を増やしましょう」という目標の共有です。目的を明確にすることで、スタッフのモチベーションも上がりました。
まとめ:衛生管理の簡略化で売上アップを実現しよう
衛生管理の簡略化は、決して手を抜くことではありません。むしろ、効率的に確実な衛生管理を行うことで、他の業務に時間を使えるようになり、結果として売上アップにつながるんです。
HACCPの考え方を取り入れ、重要ポイントに管理を集中させることで、効率的に食品安全を確保できます。さらに、デジタルツールを活用することで、記録作業の時間を大幅に削減できるんです。
衛生管理に追われて疲弊するのではなく、効率的な衛生管理を実現して、お客様との会話や料理の質向上に時間を使える店舗こそが、長く愛される店になるんです。
衛生管理の簡略化は、お客様、スタッフ、そして経営者、全ての人にとってWin-Winの関係を作り出します。ぜひ、今日ご紹介したステップから始めてみてください。
飲食店の衛生管理や経営について、もっと詳しく知りたい方は、evisuのLINE公式アカウントからお気軽にご相談ください。25年の現場経験を活かして、あなたのお店の課題解決をサポートします。