こんにちは!飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー、岡本です!
今日は飲食店経営者の皆さんに、厨房の熱中症対策について本気でお話しします。
夏場の厨房、まさに「灼熱の戦場」です。調理機器から放出される熱気、蒸気、油煙が充満する密閉空間で、スタッフは一日中立ち仕事に追われています。私も現場にいた頃は、汗だくになりながら「今日も暑いけど、がんばろう」と自分に言い聞かせる日々でした。
※私は厨房でなく、店頭(ほぼ外)でお客様をお出迎えとお見送りしておりました。夏場でもジャケットを着ていましたので相当汗だくでした(汗)

しかし、熱中症は意識の力だけで防げるものではありません。体温調節機能が追いつかなくなった時、人は突然倒れてしまうのです。
実は飲食業界では夏場の熱中症発生率が高く、特に調理スタッフの熱中症リスクは一般的な屋内作業の約2倍とも言われています。さらに気候変動の影響で、年々夏の気温は上昇傾向にあります。
厨房内の温度は外気温よりも10℃以上高くなることも珍しくなく、40℃を超える環境で働くスタッフも少なくありません。こうした状況で、単に「水分をとりましょう」「扇風機を置きましょう」といった対策だけでは不十分なのです。
なぜ飲食店を含めた職場で熱中症対策が2025年6月から義務化されるのか
皆さん、重要なお知らせです。
2025年6月1日から、職場での熱中症対策が法律で義務化されます。 |
これまでは努力義務とされていた熱中症対策が、法的な責任が伴う対応に変わるのです。
厚生労働省によると、夏季に屋外で作業する等、熱中症を生ずるおそれのある作業を行う事業者に対して、「早期発見のための報告体制」、「重篤化を防止するための実施手順を作成」、「関係者への周知」が義務付けられます。
参考元:職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行)
これは面倒な規制と捉えるのではなく、スタッフの命と健康を守るための大切な一歩なんです。
事業者が対策を怠った場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。これは決して軽視できない問題です。
厨房の熱中症対策は、労働環境だけでなく店舗全体の衛生管理体制にも深く関わります。スタッフが安全かつ衛生的に働ける環境を整えることは、食品衛生面の信頼にも直結します。
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なぜこのような義務化が進められたのでしょうか?
それは職場における熱中症による死亡災害が年々増加しており、その原因のほとんどが初期症状の放置や対応の遅れによるものだからです。熱中症は死亡災害に至る割合が他の災害の約5〜6倍とも言われています。
特に飲食店の厨房は、高温多湿な環境が長時間続く典型的な熱中症リスクの高い職場です。私たち飲食店経営者には、スタッフを守る責任があります。
冷やすだけでは不十分な理由と本質的な対策の考え方
「扇風機を置けば大丈夫」「水分さえとっていれば問題ない」
多くの店舗がこのような対策で済ませていますが、残念ながらこれだけでは不十分です。なぜなら、厨房の熱中症問題は複合的な要因から成り立っているからです。単に体を冷やすだけでなく、環境・体調・作業方法など総合的なアプローチが必要なんです。
ある店舗では、高性能の業務用エアコンを導入したにもかかわらず、調理スタッフが熱中症で倒れるという事態が発生しました。原因を調査したところ、エアコンの冷気が調理機器の上に設置されたフードダクトに吸い込まれ、スタッフの作業位置まで届いていなかったのです。
本質的な対策とは、次の3つの視点から考える必要があります。
- 環境改善:温度・湿度の管理、空気の流れの最適化
- 体調管理:水分・塩分補給、休憩、体調チェック
- 作業改善:作業時間の分散、ローテーション、機器配置の見直し
要は、厨房全体をシステムとして捉え、熱の発生源から人の体調管理まで、一貫した対策を講じることが重要なのです。
あなたの店舗では、これら3つの視点からバランスよく対策できていますか?
即効性のある飲食店の厨房向け熱中症対策5選
では、すぐに実践できる具体的な対策を5つご紹介します。どれも私が実際に現場で効果を確認したものばかりです。
1. 空調服・冷却ベストの導入
最近、飲食業界でも急速に普及しているのが空調服です。服の内部に小型ファンを搭載し、外気を取り込んで体を冷やす仕組みの作業着で、体感温度を3〜5℃程度下げる効果があります。
あるラーメン店では、全スタッフに空調服を支給したところ、「夏場の厨房作業が苦痛ではなくなった」「料理に集中できるようになった」という声が上がりました。特に調理長からは「スタッフの集中力が持続し、ミスが減った」という嬉しい報告も。
空調服は個人単位の温度管理ができ、移動しながら作業しても冷却効果が持続するのが大きなメリットです。初期投資は必要ですが、スタッフの健康と生産性を考えれば十分に元が取れる投資と言えるでしょう。
2. 給気・排気バランスの最適化
厨房の暑さ対策で見落とされがちなのが、給気と排気のバランスです。排気能力が高くても、新鮮な空気が入ってこなければ効果は半減します。
厨房の入口ドアを半開きにして、そこから冷気を取り込むよう小型の送風機を設置したところ、厨房内の温度が約3℃下がりました。コストをかけずに効果を出せる方法の一つです。
また、グリスフィルターの定期清掃も重要です。油汚れが溜まったフィルターは排気効率を大幅に下げてしまいます。週に1回の清掃を習慣づけることで、換気効率を最大限に保つことができます。
3. 作業環境の見直しと休憩ルールの設定
調理機器の配置を見直し、熱源を集中させないことも効果的です。また、厨房内に小さくても良いので「クールダウンスポット」を設けることをお勧めします。
あるイタリアンレストランでは、厨房の一角に小型のスポットクーラーを設置し、5分間の「クールダウンタイム」を交代で取るルールを導入しました。その結果、スタッフの体調不良が減少し、夏場でも安定した調理品質を維持できるようになったそうです。
具体的なルールとしては、2時間に1回、5分間の冷却休憩を義務付けるといった形が現実的です。忙しい時間帯でも必ず実施することが重要です。
4. 水分・塩分補給ステーションの設置
厨房内の目立つ場所に、水分・塩分補給用のドリンクステーションを設置しましょう。麦茶やスポーツドリンクなど、常に冷えた飲み物が手に取れる環境を整えることが大切です。
ある店舗では厨房内に専用の冷蔵庫内区画を設置し、スタッフ専用の麦茶とスポーツドリンクを常備していました。さらに、塩飴も用意し、自由に摂取できるようにしていました。
これにより、「水分補給のために厨房を離れる」という心理的ハードルを下げることができ、スタッフの水分摂取量が増加しました。
5. 体調チェックと報告体制の構築
熱中症の初期症状を見逃さないために、シフト開始前の体調チェックと、作業中の声かけを習慣化しましょう。
具体的には、出勤時に「睡眠時間」「体調」「前日の飲酒有無」などを簡単にチェックするシートを用意し、リスクの高いスタッフには特に注意を払います。また、作業中も定期的に「大丈夫?」と声をかけ合う文化を作ることが重要です。
熱中症の初期症状(めまい、頭痛、吐き気など)を感じたら、すぐに報告できる体制を整えておきましょう。早期発見・早期対応が重篤化を防ぐ鍵となります。
飲食店が中長期的に取り組むべき本質的な熱中症対策
即効性のある対策と並行して、中長期的な視点での本質的対策も進めていきましょう。これらは初期投資が必要なものもありますが、スタッフの健康と生産性向上、そして人材確保の観点から見れば、必ず回収できる投資です。

1. 厨房レイアウトと空調設備の根本的見直し
厨房の熱問題を根本から解決するには、レイアウトと空調設備の見直しが効果的です。特に調理機器の配置と空調の吹き出し口・吸い込み口の位置関係は重要です。
ある中華料理店では、改装のタイミングで厨房レイアウトを一新し、熱源となる機器を一箇所に集中させず分散配置しました。また、天井からのスポット空調を各作業エリアに設置することで、スタッフの立ち位置に直接冷気が届くようになったそうです。
結果として、夏場の厨房内温度が平均5℃下がり、スタッフの体調不良が大幅に減少したのです。
2. 調理機器の省エネ・低発熱タイプへの更新
古い調理機器は効率が悪く、必要以上に熱を発生させていることがあります。設備更新の際は、省エネタイプや熱効率の良い機器を選ぶことで、厨房内の熱環境を改善できます。
IH機器の導入も一つの選択肢です。ガス機器に比べて室温上昇を抑えられるメリットがあります。また、調理機器の断熱性能も重要なポイントです。
設備投資の際は、省エネルギー投資促進支援事業などの補助金も活用できます。初期コストを抑えながら、最新の省エネ機器を導入する道も検討してみてください。
3. スタッフ教育と熱中症予防文化の醸成
どんなに設備を整えても、スタッフ一人ひとりの意識が低ければ効果は限定的です。定期的な熱中症予防研修を実施し、全員が症状を理解し、予防策を実践できるようにしましょう。
大切なのは「熱中症予防は生産性向上につながる」という前向きなメッセージを伝えることです。単なる規則や義務ではなく、全員がより快適に、効率よく働くための取り組みだという認識を共有しましょう。
飲食店の熱中症対策は経営戦略そのもの
ここまで様々な対策をご紹介してきましたが、最後に強調したいのは、熱中症対策は単なる法令遵守や福利厚生ではなく、飲食店経営の戦略そのものだということです。
なぜなら、適切な熱中症対策は以下のような多面的なメリットをもたらすからです。
- スタッフの離職率低下(快適な職場環境の提供)
- 採用力の向上(「スタッフを大切にする店」という評判)
- 生産性と料理品質の安定(集中力の維持)
- 欠勤・休業リスクの低減(健康管理)
- 法的リスクの回避(義務化への対応)
私が現場にいた頃、夏場は「暑さとの戦い」という意識が強く、それが当たり前だと思っていました。しかし今は違います。適切な対策を講じれば、夏場でも快適に、高いパフォーマンスを維持できる厨房環境を作ることができるのです。
熱中症対策は、コストではなく投資です。スタッフの健康と店舗の生産性、そして経営の安定性に直結する重要な経営戦略なのです。
この夏、あなたの店舗では具体的にどんな対策を実施しますか?今日ご紹介した方法から、まずは取り組みやすいものを選んで、早速実践してみてください。スタッフと一緒に、暑さに負けない強い厨房チームを作りましょう。
厨房の熱中症対策について、さらに詳しいアドバイスが必要な方は、ぜひ飲食業界で25年、「美味しい」と「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー、岡本にevisu公式LINEにてご相談ください。現場経験に基づいた具体的なアドバイスをさせていただきます。
一緒に、スタッフが安心して働ける、強くて愛されるお店を作っていきましょう!
岡本優
飲食店経営伴走型パートナー
もう、一人で悩まない。
あなたの店の「右腕」になります。
利益改善、集客強化、人材育成、オペレーション改善まで、
経営のあらゆる課題に、オーナー様と同じ目線で
共に答えを見つけ出します。
現場力とマーケティング力を掛け合わせた、
evisuだけが提供できる継続的なパートナーシップです。
飲食店の課題の答えは、すべて現場にあります。
私の仕事は、その答えをオーナー様と共に見つけ出すこと。
飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてまいりました。株式会社サッポロライオン「銀座ライオン」にアルバイトにて入社後、ひたすら経営と現場に没頭する中で、新宿店、そして800席を超える銀座本店の総支配人を拝命。
赤字店舗の再建を託される機会も多く、お客様とスタッフ双方の満足度向上を軸としたアプローチで、全ての担当店舗を黒字化へ導いた経験は、私の大きな財産です。
しかし、多くの飲食店が未来に不安を抱えている現状を目の当たりにし、この経験を業界全体のために活かしたいという想いが日に日に強くなりました。そこで2025年、株式会社evisuを設立。25年間現場で培ったリアルなノウハウを、同じ志を持つ経営者の皆様と分かち合い、共に困難を乗り越えるパートナーでありたいと考えております。
「楽しくなければ飲食店ではない」を信念に、皆様のお店が笑顔で溢れる場所になるよう、全力でサポートいたします。
