こんにちは!飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー、岡本です。
今日は多くの飲食店経営者が抱える「一人客」への誤解と、そこに隠された大きなビジネスチャンスについてお話しします。
「おひとり様(一人客)は席を取るだけで売上が少ない」「回転率が悪くなる」「雰囲気が暗くなる」—こんな声、現場で何度も耳にしてきました。私も若手時代は正直そう思っていました。
しかし、25年間の飲食業界経験を通じて確信したことがあります。おひとり様(一人客)こそ、今の飲食業界における最大の救世主になり得るということです。なぜなら、彼らは単なる「おひとりでご来店するお客様」ではなく、店舗経営に新たな価値をもたらす存在だからです。
私はあるとき、変化に気づきました。平日の夕方から続々と一人客が訪れ、カウンター席はすぐに満席になるのです。彼らは「ちょっと一杯」のつもりが、結果的に食事も注文し、客単価は団体客と変わらないことも珍しくありませんでした。
この現象は偶然ではありません。社会構造の変化と消費者心理が生み出した、新たな飲食ビジネスの可能性なのです。
なぜ今、おひとり様(一人客)が増えているのか?社会背景を紐解く
おひとり様(一人客)が増加している背景には、明確な社会的変化があります。まず挙げられるのは単独世帯の急増です。

厚生労働省の調査によると、全世帯に対する単独世帯の割合は、2001年には24.1%だったものが、2023年には34%にまで上昇しています。これは単に高齢者の一人暮らしが増えただけでなく、若年層や中高年層でも独立した暮らしを選ぶ人が増えているということです。
また、SNSやメッセージアプリの普及により「対人疲れ」を感じる人も増加しています。株式会社Tierの調査では、SNS利用者の半数以上がSNS疲れを感じており、その主な原因が人間関係だという結果も出ています。
参考元:SNS利用者の半数以上が人間関係によるSNS疲れを実感。SNSデトックスや利用中止を検討した人は約6割に及ぶ
さらに2020年以降のコロナ禍は、「一人で過ごす時間」の価値観を大きく変えました。テレワークの普及や外出自粛を経験したことで、多くの人が「一人の時間」を見直すきっかけになったのです。
こうした変化により、「ソロ活」や「おひとりさま」という言葉が一般化し、一人で外食を楽しむことへの心理的ハードルが下がっています。マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングの調査では、9割以上の人が「ひとりで自由に使える時間の必要性を実感している」と回答しています。
参考元:おひとりさま消費に関する調査(2024年)ひとり時間の実態・意識編
かつては「寂しい人」「友達がいない人」というネガティブなイメージがあった一人での外食。しかし今では「自分を大切にしている」「自立している」「行動力がある」といったポジティブな評価に変わってきているのです。
おひとり様(一人客)が飲食店にもたらす5つのメリット
おひとり様(一人客)は「席を取るだけで売上が少ない」という誤解とは裏腹に、実は飲食店経営に多くのメリットをもたらします。私の経験から特に重要な5つのポイントをお伝えします。

1. 驚くほど高い回転率
おひとり様(一人客)の多くは食事を楽しむことに集中するため、店内での滞在時間が比較的短くなる傾向があります。特に昼食時間帯では、団体客が長時間席を占有することに比べ、おひとり様(一人客)は30~45分程度で食事を終えることも珍しくありません。
ある店舗では、ランチタイムの一人客の平均滞在時間は27分、グループ客は53分という数字が出ていました。この回転率の差は、限られた席数で最大の売上を上げるために非常に重要な要素です。
2. 安定した客層としての価値
おひとり様(一人客)の来店パターンは比較的予測しやすく、天候や曜日による変動が少ない傾向があります。特に近隣のオフィスワーカーや常連の一人客は、定期的に来店する確率が高いため、安定した売上基盤となります。
おひとり様(一人客)の獲得は、平日の昼間を中心に固定客を増やすことで、週末の団体客に依存しない経営基盤を作ることができたのです。
3. 予約なしでの来店が多い
おひとり様(一人客)は予約なしで来店されることが多いため、予約キャンセルによる機会損失のリスクが低減されます。また、空席があれば気軽に立ち寄っていただけるため、予約で埋まっていない時間帯の穴埋めとしても重要な役割を果たします。
予約キャンセル後の空き時間を一人客で埋めることで、月に約15%の売上増加に成功した例もあります。
4. SNSでの情報発信力
おひとり様(一人客)、特に若い世代は、食事の様子をSNSに投稿する傾向が強いです。料理の写真や店内の雰囲気を発信してくれることで、無料の宣伝効果が期待できます。
実際、とある新宿のイタリアン店では、一人客向けのフォトジェニックなハーフサイズメニューを導入したところ、Instagram投稿が2ヶ月で3倍に増え、新規客の「SNSを見て来ました」という声が急増しました。
5. 貴重なフィードバック源
おひとり様(一人客)は料理やサービスに対して率直な意見を持っていることが多く、貴重なフィードバック源となります。グループ客は会話に集中するあまり、料理の細かい評価をしないこともありますが、一人客は食事そのものに意識が向くため、より具体的な感想を持っています。
このフィードバックを活かすことで、メニュー改善や接客の質向上につなげることができるのです。
おひとり様(一人客)は工夫次第で店舗の安定的な売上源になり得ます。具体的にどのような工夫で売上を伸ばせるのかは、こちらの記事で実践的なアイデアをまとめています。
おひとり様(一人客)を惹きつける店づくりの実践ポイント
では具体的に、おひとり様(一人客)を惹きつけ、リピーターに変えるための店づくりはどうすればいいのでしょうか。私が現場で実践し、効果を実感した7つのポイントをご紹介します。

1. 入りやすい店舗ファサード設計
おひとり様(一人客)が最も気にするのは「入りづらさ」です。特に初めて訪れる店舗では、中の様子が見えない構造や、グループ客ばかりが目立つ店内は大きな参入障壁となります。
対策としては、店内が適度に見える構造にする、メニューを外から確認できるようにする、一人でも入りやすい雰囲気づくりを心がけることが重要です。大阪のとある店舗では、入口付近に一人席を設け、「おひとりさまも大歓迎」の小さな看板を出しただけで、おひとり様(一人客)が1.5倍に増えました。
2. カウンター席の戦略的配置
カウンター席はおひとり様(一人客)にとって最も居心地の良い空間です。壁に向かって座るレイアウトよりも、調理場が見えるオープンキッチンスタイルのカウンターの方が、一人の時間を楽しめると好評です。
宮城大学の滝口沙也加准教授の研究によると、「個人経営の飲食店を対象としたお店の『入りやすさ』に関する研究」において、調理の様子が見えるカウンター席は一人客の滞在満足度を高める重要な要素であることが示されています。
オープンキッチンのカウンター席がある店舗は、一人客比率が平均で15%高かったというデータもあります。
参考元:個人経営の飲食店を対象としたお店の「入りやすさ」に関する一考察
3. 一人前メニューの充実
おひとり様(一人客)が気にするのは「量」と「バリエーション」です。フルサイズのメニューでは量が多すぎる、でも一品だけでは物足りない—そんな悩みを解決するのが、ハーフサイズメニューや少量多品目の一人用コースです。
東京のある和食店では、一人用の「少しずつ楽しむ膳」を開発したところ、平日夜の一人客が2倍に増え、客単価も20%アップしました。量を減らすだけでなく、品目を増やすことで満足度と客単価の両方を高められるのです。
4. スタッフの適切な距離感
おひとり様(一人客)へのサービスで最も難しいのが「距離感」です。過剰な声掛けは「ひとりの時間」を邪魔することになりますが、放置しすぎると「大事にされていない」と感じさせてしまいます。
理想的なのは、最初の接客で「ゆっくりお過ごしください」と伝え、その後は目が合った時や必要な時だけ声をかける方法です。また、スマホやタブレットでの注文システムも、おひとり様(一人客)には好評です。
5. Wi-Fi環境と電源の提供
おひとり様(一人客)の多くは、食事中にスマホを使ったり、PCで作業したりすることがあります。特にランチタイムのビジネスパーソンにとって、Wi-Fiと電源の有無は店選びの重要な基準となっています。
これらを提供することで、滞在時間が延び、ドリンクの追加注文などにつながる可能性も高まります。実際、とある渋谷のカフェでは、カウンター席に電源を設置したことで平均滞在時間が15分延び、客単価が12%上昇しました。
6. 読書材やエンターテイメントの提供
雑誌や新聞、タブレットでのコンテンツ提供など、一人の時間を充実させるためのエンターテイメントも効果的です。特に居酒屋やカフェでは、こうした「時間の過ごし方」の提案が差別化ポイントになります。
一人の時間を楽しむための「仕掛け」があることで、「また来たい」と思わせる理由になるのです。
7. SNS映えを意識した演出
おひとり様(一人客)、特に若い世代はSNSへの投稿を楽しみにしている場合があります。料理の盛り付けや店内装飾など、写真映えするポイントを意識することで、自然な宣伝効果が期待できます。
ただし、あくまで自然な形で取り入れることが重要です。「SNS用」と露骨にわかる演出は、かえって逆効果になることもあります。
先進事例に学ぶ一人客戦略の成功パターン
おひとり様(一人客)の価値に早くから気づき、成功を収めている飲食店の事例から、具体的なヒントを探ってみましょう。
一蘭の「味集中カウンター」戦略
ラーメンチェーン「一蘭」は、おひとり様(一人客)向けの「味集中カウンター」で知られています。個室風の仕切りがあるカウンター席は、当初「ラーメンに集中するため」という理由で導入されましたが、実はビジネス的にも非常に優れた戦略でした。
この座席デザインにより、おひとり様(一人客)は周囲の目を気にせず食事に集中できます。また、店舗側としては席の回転率が上がり、限られたスペースで最大の売上を上げることが可能になりました。
一蘭の最高売上店舗では、1日平均1,500人もの来店があり、月商約4,000万円という驚異的な数字を叩き出しています。おひとり様(一人客)特化型の店舗設計が、このような高い生産性を実現しているのです。
2025年以降の飲食業界で勝ち残るためのおひとり様(一人客)戦略
最後に、これからの飲食業界でおひとり様(一人客)戦略がなぜ重要になるのか、そして具体的にどう取り組むべきかをお伝えします。
2025年以降の飲食業界では、人口減少と高齢化が進み、大人数での来店はさらに減少することが予想されます。また、デリバリーやテイクアウトの定着により、店内飲食の価値そのものが問われる時代になっています。
そんな中で生き残るためには、「専門性を極めた形態」や「高付加価値型」の店舗が有利とされています。一人客戦略はまさにこの流れに合致するものであり、以下の3つの視点で取り組むことが重要です。
1. 空間デザインの再構築
これからの店舗設計では、テーブル席中心から、おひとり様(一人客)と少人数グループの両方に対応できる柔軟なレイアウトへの転換が求められます。カウンター席の増設や、1〜2人用の小さなテーブルの配置など、少人数客を前提とした空間設計が重要です。
また、プライバシーと開放感のバランスを考慮し、一人でも居心地良く過ごせる環境づくりを意識しましょう。
2. オペレーションの効率化
おひとり様(一人客)が増えると、注文や配膳の頻度が増加します。この負担を軽減するために、タブレット注文システムやQRコード決済など、テクノロジーを活用したオペレーションの効率化が重要です。
これにより、スタッフは接客の質向上に集中できるようになり、一人客の満足度向上につながります。
3. コミュニティ形成の場としての価値創造
一見矛盾するようですが、おひとり様(一人客)の中には「一人だけど、どこかでつながりを感じたい」という心理を持つ人も少なくありません。店主や常連客との何気ない会話、同じ趣味を持つ人との偶然の出会いなど、緩やかなコミュニティ形成の場としての価値を提供できれば、強力な差別化ポイントになります。
例えば、趣味や関心事をテーマにした「一人でも参加できるイベント」の開催や、常連客同士が自然に交流できる仕掛けづくりなどが効果的です。
おひとり様(一人客)は決して「仕方なく受け入れる存在」ではなく、これからの飲食店経営において積極的に取り込むべき重要な顧客層です。社会構造の変化を敏感に捉え、おひとり様(一人客)の心理と行動を理解することで、新たなビジネスチャンスを掴むことができるでしょう。
一緒に、強くて愛される店づくりを進めていきましょう!もし飲食店経営でお悩みがあれば、飲食業界で25年、「美味しい」と「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー岡本にevisu公式LINEにてご相談ください。
岡本優
飲食店経営伴走型パートナー
もう、一人で悩まない。
あなたの店の「右腕」になります。
利益改善、集客強化、人材育成、オペレーション改善まで、
経営のあらゆる課題に、オーナー様と同じ目線で
共に答えを見つけ出します。
現場力とマーケティング力を掛け合わせた、
evisuだけが提供できる継続的なパートナーシップです。
飲食店の課題の答えは、すべて現場にあります。
私の仕事は、その答えをオーナー様と共に見つけ出すこと。
飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてまいりました。株式会社サッポロライオン「銀座ライオン」にアルバイトにて入社後、ひたすら経営と現場に没頭する中で、新宿店、そして800席を超える銀座本店の総支配人を拝命。
赤字店舗の再建を託される機会も多く、お客様とスタッフ双方の満足度向上を軸としたアプローチで、全ての担当店舗を黒字化へ導いた経験は、私の大きな財産です。
しかし、多くの飲食店が未来に不安を抱えている現状を目の当たりにし、この経験を業界全体のために活かしたいという想いが日に日に強くなりました。そこで2025年、株式会社evisuを設立。25年間現場で培ったリアルなノウハウを、同じ志を持つ経営者の皆様と分かち合い、共に困難を乗り越えるパートナーでありたいと考えております。
「楽しくなければ飲食店ではない」を信念に、皆様のお店が笑顔で溢れる場所になるよう、全力でサポートいたします。
