こんにちは!飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー、岡本です。
飲食店経営において、売上を伸ばすことばかりに目が行きがちですが、実は在庫管理こそが利益率を大きく左右する重要な要素なんです。
ある店舗では、毎月の棚卸で数十万円の「不明ロス」が発生していました。これは年間で数百万円の損失です。きちんとした在庫管理システムを導入し、スタッフ全員で取り組んだ結果、わずか3ヶ月で利益率が8%も向上しました。
飲食店の利益率を考える上で、「原価率」は最も重要な指標の一つです。経済産業省の調査によると、飲食企業の売上高営業利益率は平均で8.6%。中小企業では11.4%となっています。しかし、在庫管理を徹底することで、この数字を20〜30%にまで引き上げている店舗も少なくありません。
原価率の正しい計算と改善方法を知ることで、在庫管理による利益改善の効果がさらに高まります。
では、なぜ在庫管理が利益率向上に直結するのでしょうか?
在庫管理の失敗が引き起こす飲食店における3つの問題点
飲食店で在庫管理がうまくいかないと、すぐに利益を食い潰してしまう問題が発生します。私が現場で見てきた主な問題点は次の3つです。

1.廃棄ロス
まず最も深刻なのが「廃棄ロス」です。発注量と販売量のバランスが取れていないと、食材を大量に廃棄することになります。特に鮮度が命の生鮮食品は、適切な在庫管理ができていないと、あっという間に廃棄の山になってしまうんです。
廃棄ロスは原価率や経費にも直結します。コスト削減と利益確保の視点はこちらで詳しく解説しています。
2.機会ロス
次に「機会ロス」の問題があります。在庫が足りなくて「すみません、それは品切れです」と言わなければならない状況。これは目に見えない損失ですが、実はかなり大きいんです。お客様の期待を裏切るだけでなく、リピート率の低下にもつながります。
3.過剰在庫
そして最後に「過剰在庫」の問題。キャッシュフローを圧迫するだけでなく、保管スペースの無駄遣いや、食材の品質低下にもつながります。飲食店の厨房や倉庫スペースは限られていますから、過剰在庫は作業効率の低下も招くんです。
あなたの店舗でも、これらの問題に心当たりはありませんか?
飲食店経営において特に重要な在庫管理の基本指標と計算方法
在庫管理を改善するには、まず基本的な指標を理解することが大切です。飲食店経営において特に重要な指標は「在庫回転率」と「交差比率」です。

1. 在庫回転率:在庫の「スピード」を測る指標
「仕入れた食材やドリンクが、どれくらいの速さで売れて(現金に変わって)いるか」を示す指標です。
飲食店にとって、在庫は現金が姿を変えたものです。この回転が遅い(=数字が低い)ということは、現金が倉庫で眠っているのと同じ状態。特に、鮮度が命の食材においては、回転の遅れは「食材ロス(廃棄)」に直結し、利益を圧迫する最大の敵となります。高い在庫回転率は、効率的な経営と健全なキャッシュフローの証です。
【計算式】 在庫回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫高 |
- 売上原価: その期間に売れた商品の仕入れにかかった総額。
- 平均在庫高: (期首の在庫高 + 期末の在庫高)÷ 2
食材カテゴリー別の比較: 例えば、「鮮魚」の回転率が低ければ、仕入れ量が多すぎるか、メニューの人気が落ちている可能性があります。「ワイン」のような長期保存可能なものは回転率が低くても問題ありませんが、その中でも特に動きの鈍い銘柄はないか、といった視点で分析します。
目標設定: 「Aランクの食材は、在庫回転率 月20回以上を目指す」のように具体的な目標を設定し、仕入れ量をコントロールします。
2. 交差比率:在庫の「儲ける力」を測る指標
「投下した在庫(仕入れ)が、どれだけ効率的に粗利益を生み出しているか」を示す指標です。
在庫回転率だけを見ていると、「とにかく速く売れれば良い」という思考に陥りがちです。しかし、たとえ回転が速くても、利益の薄い商品ばかりでは経営は苦しくなります。交差比率は、在庫の「スピード(回転率)」と「収益性(粗利益率)」の両方を掛け合わせて評価するため、どの在庫が本当に「儲かっている」のかを正確に判断できます。
【計算式】 交差比率=在庫回転率×粗利益率 (%) *粗利益率: (売上高 – 売上原価)÷ 売上高 |
メニュー・商品の実力評価:
- 例A:生ビール
- 在庫回転率:高い (30回)
- 粗利益率:低い (50%)
- 交差比率:1500
- 例B:高級ボトルワイン
- 在庫回転率:低い (1回)
- 粗利益率:高い (70%)
- 交差比率:70
この場合、一見利益率の高いワインより、ビールの方が在庫投資に対して15倍以上も効率良く利益を生んでいることが分かります。だからといってワインをやめるのではなく、「ワインの在庫を持ちすぎていないか?」「もっと回転を上げるための販促はできないか?」といった次の戦略を考えるための重要なヒントになります。
利益率や粗利率の数値管理は、在庫効率の判断にも不可欠です。計算方法や改善事例はこちら。
これらの指標を定期的に計算し、推移を追うことで、在庫管理の改善点が見えてきます。要は、数字で見える化することが大切なんです。
利益率10%向上を実現する在庫管理の5つの実践術
ここからは、私が25年の飲食業界経験で培った、具体的な在庫管理の実践術をお伝えします。これらを実践することで、利益率を10%以上向上させることも十分可能です。

1. ABCランク付け分析による「重点管理」の実践
在庫品目を重要度に応じてA・B・Cの3ランクに分け、管理の優先順位をつける手法です。
全ての在庫を同じ労力で管理するのは非効率です。在庫金額の大部分(約70-80%)を占める少数のAランク品目(高級肉、魚介、高価な酒類など)を重点的に管理することで、最小の労力で、最も効果的に在庫ロス(廃棄・紛失)を防ぎ、原価をコントロールできます。
【具体的な実践術】
- Aランク(最重要品目): 在庫金額の上位10-20%品目。牛肉やマグロ、高級ワインなど。これらは毎日でも在庫数をチェックし、厳格に管理します。
- Bランク(中重要品目): 在庫金額がそれに次ぐ20-30%品目。乳製品や一般的な野菜など。これらは週に一度のチェックで十分です。
- Cランク(低重要品目): 在庫金額の大部分を占めない品目。小麦粉や塩、安価な調味料など。これらは月に一度の棚卸しで管理します。
2. 「先入れ先出し」の徹底と「見える化」
「先に仕入れたものから先に使用する」という基本原則を、誰でも守れる仕組みにすることです。
飲食店の利益を最も蝕む「食材の廃棄ロス」を直接的に防ぐための、最も基本的かつ効果的な方法です。古い食材が倉庫の奥で眠り、賞味期限切れになる「食材の墓場」を作りません。
【具体的な実践術】
- 保管場所のルール化: 在庫を保管する際は、必ず「奥に新しいもの、手前に古いもの」を置くルールを徹底します。
- 日付の見える化: 納品された食材には、太いマジックで納品日や開封日を大きく記入します。誰の目にも新旧の区別がつくようにすることが重要です。※日付シールも効果的です。
- 透明コンテナの活用: 中身が見えない段ボール箱から、中身が一目でわかる透明な保存容器に入れ替えることで、在庫の存在忘れを防ぎます。※衣装ケースなども引き出しになっていて透明なので効果的です。洗浄も楽で衛生的でもあります。
3. 「レシピの標準化」と「ポーション管理」
全ての料理を、常に「決まった分量」で「決まった手順」で作れるようにすることです。
料理人の「感覚」による分量のブレは、知らないうちに原価を押し上げる最大の要因です。レシピを標準化することで、一皿あたりの原価が安定し、想定通りの利益を確保できます。また、お客様に常に同じ品質の料理を提供できるため、顧客満足度の安定にも繋がります。
【具体的な実践術】
- 計量の徹底: パスタの乾麺、ソース、肉のグラム数など、全てをスケール(秤)や計量カップ、決まった大きさのレードル(お玉)で正確に計量します。
- 写真付きマニュアルの作成: 調理手順と、完成時の正確な盛り付け(ポーション)を写真に撮り、誰が見ても同じものが作れるマニュアルをキッチンに常備します。
4. POSデータを活用した「理論在庫」との差異分析
「売上から計算して、本来あるべき在庫数(理論在庫)」と「実際に数えた在庫数(実在庫)」の差を分析し、見えないロスを突き止めることです。
廃棄やポーションミスだけでなく、オーダーミス、記録されない賄い、あるいは不正(盗難)といった「原因不明の損失」を炙り出すことができます。この差異をゼロに近づける努力が、利益率を直接的に改善します。
【具体的な実践術】
- POSレジの販売実績データから、その日に出たメニューに使われた食材の総量を計算し、「理論上の在庫消費量」を算出します。
- 営業終了後に主要な食材(特にAランク品目)の実在庫を数え、理論上の在庫消費量と一致するかを確認します。
- 大きな差異があれば、すぐにその原因(オーダーミスはなかったか、廃棄は記録されているか等)を調査し、チームで共有して再発防止に努めます。
5. 発注点の最適化と「部分的棚卸し」の導入
「勘」に頼った発注をやめ、データに基づいて「いつ」「どれだけ」発注するかを決め、在庫チェックを日常業務に組み込むことです。
過剰在庫(キャッシュフローの悪化、廃棄ロスの増加)と、在庫切れ(販売機会の損失)の両方を防ぎ、常に最適な在庫レベルを維持することができます。また、月末に集中していた棚卸しの負担を分散し、管理の精度を高めます。
【具体的な実践術】
- 過去の販売データから、商品ごとの「安全在庫数(これを下回ると危険)」と「発注点(この在庫数になったら発注する)」をあらかじめ設定しておきます。
- 月末に全ての在庫を数える「一斉棚卸し」だけでなく、ABCランク付け分析に基づいて「Aランク品は毎日」「Bランク品は毎週」というように、品目を絞った「部分的棚卸し」を日々の業務に組み込みます。
在庫管理を効率化するデジタルツールの活用法
在庫管理をさらに効率化するには、デジタルツールの活用も検討すべきです。現在、飲食店向けに様々な在庫管理ツールが提供されています。

特に注目したいのが、POSシステムと連携した在庫管理システムです。メニューが売れるたびに自動的に在庫が減少し、発注点に達すると通知が来るようなシステムがあれば、発注忘れや過剰発注を防ぐことができます。
また、AIを活用した需要予測システムも徐々に普及しています。過去の販売データや天候、イベントなどの外部要因を分析し、最適な発注量を提案してくれるシステムです。導入コストはかかりますが、中長期的に見れば十分に元が取れる投資になります。
ただし、システム導入の際は、自店の規模や業態に合ったものを選ぶことが重要です。高機能すぎるシステムは使いこなせず、逆に業務効率を下げてしまうこともあります。まずは無料トライアルなどを活用して、使い勝手を確かめることをお勧めします。
まとめ:在庫管理で利益率向上を実現するための行動計画
今回お伝えした在庫管理の実践術をまとめると、以下のようになります。
- 定期的な棚卸しを徹底し、データを蓄積・分析する
- ABC分析を活用して商品ごとに最適な発注量を設定する
- FIFO(先入れ先出し)を徹底し、食材の廃棄を最小化する
- 在庫管理システムを導入し、人的ミスを減らす
- スタッフ全員の意識改革を促し、チーム全体で取り組む
- デジタルツールを活用して効率化を図る
在庫管理の改善は、一朝一夕には実現しません。しかし、これらの取り組みを地道に続けることで、確実に利益率を向上させることができます。
私が25年の飲食業界キャリアで学んだことは、「答えは常に現場にある」ということ。あなたの店舗に最適な在庫管理の方法を見つけるためには、まず現状を正確に把握し、小さな改善を積み重ねていくことが大切です。
飲食店経営は楽しくなければいけません。在庫管理の改善によって無駄なコストを削減し、その分をお客様へのサービス向上やスタッフの待遇改善に回すことで、より良い店舗運営が実現できるはずです。
一緒に、強くて愛されるお店を作っていきましょう!さらに詳しい飲食店経営のアドバイスが必要な方は、ぜひ飲食業界で25年、「美味しい」と「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー岡本にevisu公式LINEにてご相談ください。
岡本優
飲食店経営伴走型パートナー
もう、一人で悩まない。
あなたの店の「右腕」になります。
利益改善、集客強化、人材育成、オペレーション改善まで、
経営のあらゆる課題に、オーナー様と同じ目線で
共に答えを見つけ出します。
現場力とマーケティング力を掛け合わせた、
evisuだけが提供できる継続的なパートナーシップです。
飲食店の課題の答えは、すべて現場にあります。
私の仕事は、その答えをオーナー様と共に見つけ出すこと。
飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてまいりました。株式会社サッポロライオン「銀座ライオン」にアルバイトにて入社後、ひたすら経営と現場に没頭する中で、新宿店、そして800席を超える銀座本店の総支配人を拝命。
赤字店舗の再建を託される機会も多く、お客様とスタッフ双方の満足度向上を軸としたアプローチで、全ての担当店舗を黒字化へ導いた経験は、私の大きな財産です。
しかし、多くの飲食店が未来に不安を抱えている現状を目の当たりにし、この経験を業界全体のために活かしたいという想いが日に日に強くなりました。そこで2025年、株式会社evisuを設立。25年間現場で培ったリアルなノウハウを、同じ志を持つ経営者の皆様と分かち合い、共に困難を乗り越えるパートナーでありたいと考えております。
「楽しくなければ飲食店ではない」を信念に、皆様のお店が笑顔で溢れる場所になるよう、全力でサポートいたします。
