こんにちは!飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー、岡本です。
「なんとなく開業したけど、思ったより売上が伸びない…」
「周りの店と何が違うのか、うまく伝えられていない…」
このような悩みを抱える飲食店経営者の方は少なくありません。その原因の多くは、明確なコンセプト設計の欠如にあります。飲食店のコンセプトとは、単なる「お店の雰囲気」ではなく、あなたの店が誰に・何を・どのように提供するのかを明確に定義したものです。
私が総支配人を務めていた頃、800席という大型店舗でも、明確なコンセプトがあったからこそ、多くのお客様に支持されていました。
飲食店のコンセプトが明確な店舗と曖昧な店舗では、経営に大きな差が生まれます。
コンセプトが明確な店舗は、ターゲット顧客の心を掴み、リピーターを生み出し、口コミで広がるという好循環を生み出します。一方、コンセプトが曖昧な店舗は「なんとなく良かった」で終わり、記憶に残らず、再来店にも繋がりにくいのです。
コンセプト設計は、店舗デザイン、メニュー開発、価格設定、サービススタイル、そして集客戦略まで、すべての経営判断の基準となる重要な土台なのです。
大前提:飲食店のコンセプトに欠かせない3つの要素って?
繁盛店の土台となる「店の魂(コンセプト)」に欠かせない3つの柱
なぜ、何十年もお客様に愛され続ける店があるのか。それは、店の「魂(コンセプト)」がしっかりしているからです。店の魂は、以下の3つの柱(問い)に対する、経営者の揺るぎない「答え」で出来ています。
1. 「誰に」喜んでもらいたいのか?
全ての始まりは、ここです。「すべての人に好かれよう」とする八方美人な店は、結局、誰の心にも深くは響きません。「私たちは、この人にだけは絶対に満足して帰ってもらいたい」と思える、たった一人のお客様の顔を思い浮かべること。それが、全ての判断基準となり、店の進むべき道を照らしてくれます。
2. 「何で」喜んでもらいたいのか?
お客様が、他のたくさんの店ではなく、「わざわざ、うちの店を選ぶ理由」そのものです。これは、単に「美味しい料理」というだけではありません。お客様の心に深く刻まれる、店からの「約束」です。
3. 「どのように」喜んでもらいたいのか?
店の「魂」を、お客様が五感で感じられる「形」にするのが、この最後の柱です。いくら素晴らしい料理を用意しても、それを最高の状態でお客様に届けられなければ、喜びは半減してしまいます。ここは、店の「現場力」が試される部分です。
この「誰に」「何で」「どのように」の三つの要素が、一本の太い綱のように、がっちりと繋がっていること。 これこそが、何十年も愛される繁盛店の「魂(コンセプト)」の正体です。
飲食店コンセプト設計の基本4ステップ
岡本さん、承知いたしました。 先の対話で明確になった「店の魂となる3つの柱」を、具体的に、そして間違いのない手順で作り上げていくための「繁盛店への『設計図』の描き方」を4つの段階に分けて解説します。
この手順通りに進めれば、単なる思い付きではない、地に足のついた、成功確率の高い店の土台を築くことができます。
失敗しない飲食店の「コンセプト」の作り方 4つの手順
ステップ1:周りを見渡し、お客様を知る(市場調査)
まずは、自分が勝負する場所(市場)がどんなところで、そこにどんなお客様がいるのかを、自分の目で確かめます。ここで得た情報が、全ての判断の基礎となります。
多くの人が、店舗の場所を決めるときに分厚い調査資料を読んだり、パソコンの地図を眺めたりします。もちろん、それも一つの方法でしょう。しかし、私が信じる最高の「市場調査」は、もっと泥臭く、もっと確実なものです。
それは、店舗のシャッターがまだ下りている早朝、始発で現地に降り立ち、明かりが街から消える終電まで、一日中、ただひたすらに、店舗の前に立つんです。
馬鹿なことをやっていると思うかもしれません。しかし、その一日には、どんな調査報告書にも書かれていない、生きた情報が詰まっています。
朝の、駅へ急ぐ足早な通勤客の群れ。昼の、楽しそうにランチの店を探す女性たちの会話。午後の、少し穏やかな時間帯に通りかかる、ベビーカーを押すお母さん。夕方の、買い物袋を提げた主婦の皆さんの足取り。そして夜の、一杯飲みたそうな顔で、店の灯りを探すサラリーマンたちの姿。
彼らが
「どんな表情で、どんな服装で、どの方向から来て、どこへ消えていくのか」
「一人なのか、誰かと一緒なのか」
「歩く速さはどれくらいか」。
その全てを、自分の目に焼き付けるのです。
そうすると、街の呼吸、人々の暮らしのリズムが、肌感覚で分かってくる。
「この場所は、夜9時を過ぎると、人の流れがパタリと止まるんだな」とか、「意外と、平日の昼間に一人で歩く女性が多い。彼女たちが、気兼ねなく一人で入れる店がこの辺りには足りないな」とか。
多くの人は、これを「エリアマーケティング」と小難しく言うのかもしれません。
これは、これから自分がお世話になる街と、未来のお客様になるかもしれない人々への、最初の「ご挨拶」なんです。自分の足で立ち、自分の目で見て、肌で感じること。それ以上に確かな市場調査を、私は知りません。
ステップ2:自分の「武器」と「想い」を掘り下げる(自己分析)
周りの状況がわかったら、次は自分自身と向き合います。結局のところ、店は経営者である「あなた自身」を映す鏡です。自分の心からの想いと、誰にも負けない武器がなければ、長く愛される店は作れません。
ステップ3:「誰に」「何で」「どのように」を一本の線で繋ぐ(魂の言語化)
【目的】 手順1(お客様)と手順2(自分)で得た情報と想いを掛け合わせ、店の魂、すなわち「店のあり方」を具体的な言葉に落とし込みます。これが、先ほどお話しした「3つの柱」を決定する、設計図作りの中心です。
一枚の紙に、以下の文章を完成させます。
「私のお店は、『こんなお客様』に、『自分の武器』を活かした『こんな料理や体験』を、『こんな雰囲気のお店』で提供することで、お客様に『こんな気持ち』になっていただくためのお店です。」 |
この文章が、淀みなく、情熱を込めて語れるようになれば、店の魂は完成です。
手順4:「想い」を「儲け」に変える脳内コンピューター(事業計画)
完成した「コンセプト」が、きちんと商売として成り立つのかを、数字で冷静に検証します。情熱や想いだけでは、店を守り続けることはできません。この最終確認が、夢を現実に変えるための最後の、そして最も重要な作業です。
もし、この段階で「これでは儲けが出ない」と判断すれば、それは失敗ではありません。ステップ3に戻り、「客単価を少し上げるには?」「席数を増やすには?」と、儲けが出る形に設計図を修正すれば良いのです。
この4つのステップを丁寧に進めることこそが、繁盛店への最も確実な近道です。この設計図さえしっかり描けていれば、未来の判断に迷いはなくなります。
差別化を実現する8つの成功ポイント
競合の多い飲食業界で際立つためには、明確な差別化戦略が不可欠です。私の25年の経験から、特に効果的だった8つのポイントをご紹介します。
1. 明確なブランドアイデンティティ
あなたの店が何を大切にしているのか、どんな価値観を持っているのかを明確に定義します。例えば「地産地消にこだわる」「家族の絆を深める場所」など、店の個性を言語化しましょう。
私が新宿で複数業態を統括していた時、各店舗のブランドアイデンティティを明確に分け、それぞれのターゲット層に合わせた運営をしたことで、同じビル内でも各店の売上を最大化できました。
2. 具体的な顧客イメージ
「誰のための店か」をより具体的に想定します。年齢、職業、ライフスタイル、価値観など、できるだけ詳細に描写しましょう。
例えば「仕事に情熱を持ち、自分へのご褒美としての食事を大切にする30代女性」というように、ターゲット像が明確なほど、その人に響くメニューやサービスを設計できます。
3. 一貫したメニュー展開
メニューはコンセプトを最も直接的に表現する要素です。料理のジャンル、食材の選び方、調理法、盛り付けまで、すべてがコンセプトと一貫している必要があります。
「何でも揃っている」メニューより、「これを食べるならここ」と言われるような特徴的なメニューの方が、記憶に残り、再来店につながります。
とにもかくにも、メニューの一貫性は絶対に譲れないポイントです。京都のある店舗が、「京の食材を活かした創作料理」というコンセプトで統一したところ、観光客だけでなく地元のお客様からも支持され、固定客が大幅に増えました。
4. 独自性のある空間デザイン
店内の雰囲気は、お客様の記憶に強く残る要素です。内装、照明、BGM、座席レイアウトなど、すべての要素をコンセプトに合わせて設計しましょう。
例えば、同じイタリアンでも「カジュアルな家庭料理」と「本格リストランテ」では、全く異なる空間設計が求められます。空間が料理とサービスの世界観を補強することで、お客様の満足度と記憶度が高まります。
5. ターゲット層に響くストーリー
人は「物語」に惹かれます。あなたの店の誕生秘話、料理へのこだわり、食材の生産者との関係など、感情に訴えるストーリーを持つことで、単なる「食事の場所」以上の価値を生み出せます。
私が大阪で働いていた時、地元の生産者の顔写真とストーリーをメニューに載せたところ、お客様との会話が増え、その料理の注文率も上がりました。人は「誰が」「どのように」作ったかを知ると、より料理に愛着を持つのです。
6. SNS投稿への戦略
現代の飲食店にとって、SNSでの拡散は重要な集客手段です。「インスタ映え」を意識した料理や空間の一部を作ることで、お客様自身が情報発信者となってくれます。
ただし、見た目だけを追求して味や体験がおろそかになっては本末転倒です。コンセプトに合った「撮りたくなる瞬間」を戦略的に設計しましょう。
7. サービススタイルの工夫
接客の方法も差別化の重要な要素です。フォーマルかカジュアルか、積極的か控えめか、など、ターゲット層の好みに合わせたサービススタイルを確立しましょう。
私が担当していた店舗は、スタッフ全員が気さくに会話を楽しむスタイルを徹底し、「話しやすい店」として常連客が急増しました。サービススタイルがコンセプトと一致していると、お客様は「ここに来るとこういう体験ができる」と期待を持って再来店してくれます。
8. 適正な価格設定と利益構造
価格設定もコンセプトの一部です。「高級感」「お手頃さ」「コストパフォーマンス」など、どの価値を重視するかによって、適切な価格帯が決まります。
重要なのは、価格に見合う価値をしっかり提供することです。私が経験した成功店舗は、必ずしも「安い」わけではなく、「この価格で、この価値が得られる」という納得感を大切にしていました。
ここまでの8つのポイントの中で、あなたの店が特に力を入れるべき点は見つかりましたか?
お店のコンセプトを店舗デザインに反映させるポイント
コンセプトを具体的な形にする上で、店舗デザインは最も重要な要素の一つです。お客様が店に一歩足を踏み入れた瞬間、あなたのコンセプトが視覚的に伝わるかどうかが勝負です。
内装・外装の一貫性
外観で抱いた期待感と、内装の印象に大きなギャップがあると、お客様は混乱します。ファサード(店の顔)から内装まで、一貫したデザイン言語を使うことで、コンセプトの説得力が高まります。
私が銀座の飲食店で働いていた時、「本格的なビヤホール」というコンセプトを表現するため、外観から内装、制服、メニューブックまで、すべてに統一感を持たせていました。その結果、入店前からお客様の期待値をコントロールでき、満足度の高いサービスを提供できたのです。
照明設計の重要性
照明は店の雰囲気を決定づける重要な要素です。明るさ、色温度、光の当て方によって、同じ空間でも全く異なる印象を作り出せます。
例えば、「落ち着いた大人の空間」を目指すなら、全体を暗めにして各テーブルにスポットライトを当てる方法が効果的です。一方、「賑やかで活気のある空間」なら、明るめの照明で全体を均一に照らす方が適しています。
私が店長していた店舗では、間接照明を多用し、落ち着いた雰囲気を作ることで、長居するお客様が増え、客単価も自然と上がりました。照明は雰囲気だけでなく、お客様の行動にも大きく影響するのです。
客層に合わせた座席レイアウト
ターゲット層の利用シーンに合わせて、最適な座席レイアウトを考えましょう。例えば、ビジネス利用が多い店ではプライバシーを確保できる配置、家族連れが多い店では子供が動き回れるスペースの確保、などが重要です。
私が新宿の大型店を統括していた時、フロアごとに異なるターゲット層を想定し、座席レイアウトを変えることで、ランチとディナーで異なる客層を効率良く取り込むことができました。
体験価値を高めるデザイン要素
お客様の記憶に残る「特別な体験」を生み出すデザイン要素を取り入れましょう。例えば、オープンキッチン、シェフズテーブル、特徴的なアート作品、インタラクティブな要素などです。
私がジンギスカン専門店を担当していた時、テーブルに設置された特殊な鉄鍋が「体験の中心」となり、お客様同士の会話も弾み、客単価UPにも繋がりました。「ここでしか体験できない」要素が、強力な差別化ポイントになるのです。
一言でいうと、店舗デザインはコンセプトの「物理的な表現」です。お客様がドアを開けた瞬間から、五感を通じてあなたのコンセプトを体験できるよう、細部まで一貫性を持たせることが成功の鍵となります。
飲食店コンセプト設計でよくある失敗とその対策
25年間の現場経験の中で、私は数多くの飲食店を見てきました。ここでは、コンセプト設計において特に多い失敗パターンとその対策をご紹介します。
曖昧なコンセプト設定
「美味しい料理を提供する」「くつろげる空間」など、抽象的で差別化できないコンセプトは失敗の元です。
対策:「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを具体的に言語化しましょう。例えば「30代〜40代の子育て世代に、地元食材を使った安心安全な料理を、子供も大人も楽しめる空間で提供する」というように、具体的に定義します。
私が現場で見てきた成功店舗は、必ず「この店ならでは」の要素を明確に言語化できていました。言葉にできないコンセプトは、お客様にも伝わりません。
見た目ばかりのコンセプト
SNS映えを意識するあまり、見た目だけに注力し、料理の味や接客の質がおろそかになるケースです。
対策:視覚的要素は重要ですが、「味」「サービス」「居心地」などの本質的な価値をないがしろにしてはいけません。見た目の派手さで来店を促しても、本質的な満足がなければリピートは生まれません。
流行の安易な模倣
「あの店が流行っているから」と安易に模倣するだけでは、オリジナリティがなく、すぐに飽きられてしまいます。
対策:流行を研究するのは良いことですが、「なぜ流行っているのか」の本質を理解し、自分なりの解釈と独自性を加えることが重要です。
私が経験した成功事例では、流行を取り入れつつも「自分たちらしさ」を失わない店が長続きしていました。例えば、タピオカブームの時も、単に同じものを出すのではなく、地元食材を使ったオリジナルドリンクとして提供した店は、ブームが去った後も支持され続けています。
ターゲットとのミスマッチ
立地や周辺環境に合わないターゲット設定は、集客の大きな障壁となります。
対策:出店予定地の周辺環境、人口統計、競合店、通行量などを徹底的に調査し、実現可能なターゲット設定をしましょう。
私が京都で店長をしていた時、観光客向けの高級店が多いエリアでしたが、あえて地元客をターゲットにした中価格帯の店にしたことで、安定した固定客を獲得できました。「誰もやっていないこと」と「実現可能なこと」のバランスが重要です。
運営コストとの不均衡
理想的なコンセプトでも、運営コストが高すぎると持続可能性が低くなります。
対策:コンセプトの実現に必要なコスト(食材、人件費、家賃など)を事前に詳細に計算し、適正な利益が出せる価格設定と運営計画を立てましょう。
私が現場で見てきた失敗例の多くは、「理想を追求するあまり、現実的なコスト計算ができていなかった」というケースでした。コンセプトと収益性のバランスを取ることが、長く愛される店づくりの秘訣です。
まとめ:成功する飲食店コンセプト設計の秘訣
飲食店のコンセプト設計は、開業前の一時的な作業ではなく、店の成長と共に進化し続ける「生きた指針」です。明確なコンセプトがあれば、日々の意思決定がブレず、お客様にも一貫した価値を提供できます。
この記事でご紹介した内容をまとめると
私が25年の飲食業界経験で最も強く感じるのは、「楽しくなければ飲食店じゃない!」ということです。お客様にとっても、スタッフにとっても、そして経営者自身にとっても「楽しい」と感じられる店づくりが、持続可能な成功への道です。
明確なコンセプトに基づいた一貫性のある店づくりで、あなたの店だけの「ファン」を増やしていきましょう。一緒に、強くて愛されるお店を作っていきましょう!より詳しいアドバイスや具体的な店舗づくりのサポートが必要な方は、ぜひ飲食業界で25年、「美味しい」と「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー岡本にevisu公式LINEにてご相談ください。
岡本優
飲食店経営伴走型パートナー
もう、一人で悩まない。
あなたの店の「右腕」になります。
利益改善、集客強化、人材育成、オペレーション改善まで、
経営のあらゆる課題に、オーナー様と同じ目線で
共に答えを見つけ出します。
現場力とマーケティング力を掛け合わせた、
evisuだけが提供できる継続的なパートナーシップです。
飲食店の課題の答えは、すべて現場にあります。
私の仕事は、その答えをオーナー様と共に見つけ出すこと。
飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてまいりました。株式会社サッポロライオン「銀座ライオン」にアルバイトにて入社後、ひたすら経営と現場に没頭する中で、新宿店、そして800席を超える銀座本店の総支配人を拝命。
赤字店舗の再建を託される機会も多く、お客様とスタッフ双方の満足度向上を軸としたアプローチで、全ての担当店舗を黒字化へ導いた経験は、私の大きな財産です。
しかし、多くの飲食店が未来に不安を抱えている現状を目の当たりにし、この経験を業界全体のために活かしたいという想いが日に日に強くなりました。そこで2025年、株式会社evisuを設立。25年間現場で培ったリアルなノウハウを、同じ志を持つ経営者の皆様と分かち合い、共に困難を乗り越えるパートナーでありたいと考えております。
「楽しくなければ飲食店ではない」を信念に、皆様のお店が笑顔で溢れる場所になるよう、全力でサポートいたします。
