こんにちは!飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー、岡本です!
飲食店を経営していると、様々なお客様と接する機会があります。多くのお客様は楽しく食事を楽しみ、マナーを守ってくれますが、中には残念ながら「迷惑客」と呼ばざるを得ないケースに遭遇することもあるでしょう。
私も現場で25年間、数え切れないほどの迷惑行為に対応してきました。大声で騒ぐお客様、長時間居座るお客様、スタッフに理不尽な要求をするお客様…。これらの対応に悩んだ経験は、おそらくあなたも共感されるのではないでしょうか。

実は、調査によると飲食店の約7割が迷惑行為に遭遇した経験があるといわれています。そして近年では、SNSの普及により迷惑行為が拡散されるリスクも高まっています。
この記事では、私の長年の現場経験と最新の対応事例をもとに、迷惑客への毅然とした対応術をお伝えします。
お店に現れる迷惑行為をするお客様の典型的なパターンと心理を理解する
まず、迷惑客にはいくつかの典型的なパターンがあります。
これを理解することが、適切な対応の第一歩です。
大声で話す客は、周囲の人々に不快感を与えることが多いです。特に静かな環境を求める飲食店では、他のお客様の会話や食事を楽しむ妨げになります。調査によると、飲食店での音量は、快適性の重要な要素の一つとされています。
音が大きすぎると、食事をする意欲が失われてしまうこともあるのです。
長時間滞在する客も、特に混雑時において他の顧客に不公平感を与える要因となります。例えば、夜のピークタイムにおいて一組の客が飲み物一杯で何時間も席を占有することで、他のお客様が入店できない状況を引き起こすことがあります。
スタッフに対して無礼な態度をとる客も少なくありません。例えば、サービスに不満を持っている場合に、極端に感情的になったり、怒鳴ったりする行為が見られます。このような行動は、周囲のお客様に対しても不快感を与え、店舗の雰囲気を悪化させることがあります。
迷惑客が生まれる心理的背景には、主に3つの原因があると言われています。
1.社会的迷惑行為としての認知がない:自身の欲求を第一に考え、周りのお客様が不快感やストレスを感じる規範を認知していない 2.公的自意識より私的自意識が高い:マナー違反とわかっていても、自身の欲求を優先して行動する 3.承認欲求:世間からの注目を集めたい欲望から、常識から逸脱した行動をとる |
これらの心理を理解することで、対応の糸口が見えてきます。
初期対応の重要性と具体的なアプローチ法
迷惑客に対する初期対応は非常に重要です。適切な初期対応ができるかどうかで、その後の展開が大きく変わってきます。
私が責任者をしていた時のことです。ある夜、かなり酔ったお客様のグループが大声で歌い始め、周囲のお客様が困惑していました。
このような状況では、まず「放置しない」ことが鉄則です。放置すると他のお客様に不快な思いをさせるだけでなく、「このお店は迷惑行為を許容している」という印象を与えてしまいます。

具体的な初期対応のポイントは以下の4つです。
1. 周囲に聞こえないように伝える
迷惑行為をはたらいているテーブルへ行き、小さな声で伝えましょう。話が盛り上がりすぎて結果的にうるさくなってしまった、という悪意がないケースも多いものです。
私の経験では、「すみません、少々お声が大きくなっておりまして、他のお客様からもご指摘をいただいております」と小声で伝えるだけで、多くのお客様は理解してくれます。
2. 否定せずに依頼形で伝える
「静かにしてください」という否定形ではなく、「お声を少し落としていただけますか」という依頼形で伝えることで、お客様の反感を買いにくくなります。
これは心理学的にも効果があり、命令されたと感じるより、お願いされたと感じる方が人は協力的になるのです。
3. 理由とともにお願いする
「周囲のお客様のご迷惑になりますので」「本日大変混み合っておりまして、食事を終えられましたら席をお譲りください」など、理由を添えることで注意に説得力が生まれます。
ただ「やめてください」と言われても、お客様は「なぜだろう?」と疑問に思います。理由を伝えることで納得感が生まれるのです。
4. 冷静・毅然とした態度で対応する
ほとんどのお客様は従業員からの注意を聞き入れてくれますが、一部の迷惑な客は理不尽に怒ってきたり、行為を改善しなかったりします。このような悪質なケースに遭遇したときは、毅然とした態度ではっきり注意する対応が適切です。
あなたのお店でも、これらのポイントを踏まえた初期対応マニュアルを作成してみてはいかがでしょうか?

迷惑客への初期対応と同様に、日常的に発生するクレーム対応の型を整えておくことも重要です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
エスカレーションへの対処と法的措置の知識
初期対応で改善しない場合、次のステップに進む必要があります。これをエスカレーション対応と呼びます。
私が経験した例です。お酒に酔ったお客様が、スタッフに対して暴言を吐き続け、初期対応でも全く収まりませんでした。このような場合、店長や責任者が対応する「ワンランク上」の対応が必要です。
責任者が出ることで、「この問題は店として重く受け止めている」というメッセージになります。また、現場スタッフを守る意味でも重要です。
それでも改善しない場合、最終手段として「退店のお願い」や「警察への通報」も検討する必要があります。

法的には、飲食店には「迷惑客を退店させる権利」があります。これは契約自由の原則に基づくもので、店側には客との契約を拒否する自由があるのです。
ただし、人種や性別などを理由にした差別的な退店要請は法的に問題となります。あくまで「迷惑行為」という客観的な理由に基づいて判断する必要があります。
また、迷惑行為が悪質な場合、以下のような法的措置も検討できます。
損害賠償請求:器物破損や営業妨害による損害の賠償を求める 警察への被害届:威力業務妨害や器物損壊などの容疑で被害届を提出 出禁措置:再発防止のため、特定の客の入店を拒否する |
実際に2023年には、大手回転寿司チェーンが迷惑行為を行った客に対して約6,700万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。また、他の飲食チェーンでも警察への被害届提出により、加害者が威力業務妨害の疑いで書類送検されるケースが発生しています。
あなたは迷惑客に対してどこまで毅然とした対応ができていますか?
お店ができる予防策:迷惑客の行為を未然に防ぐ店舗運営のコツ
迷惑行為への対応も大切ですが、そもそも発生させないための予防策も重要です。私が長年の経験から効果的だと感じている予防策をご紹介します。
まず、スタッフの定期的な中間サービスが重要です。スタッフが店内をラウンドする仕組みです。これにより、お客様の異変に早く気づけるようになり、大きなトラブルになる前に対応できるようになったのです。
中間サービスは迷惑行為を防止するうえで、お客様も丁寧に対応してくれていると感じるため、顧客満足度の向上にもつながるといえるでしょう。

次に、長居防止のための工夫も効果的です。アルコール類を扱う飲食店や居心地の良いカフェなどは、ついお客様も時間を忘れて長居してしまうことがあります。
直接注意することも大事ですが、おかわりなど追加オーダーを促すことも一つの手段です。また、「混雑時は2時間制」といった、入店時に予め利用時間のご案内をすることで、トラブルを未然に防げます。
さらに、感謝の張り紙を掲示することも効果があります。「日頃から綺麗にトイレをご使用いただき、誠にありがとうございます」など感謝文を添えた張り紙が、マナー違反防止に効果があるというデータもあります。
感謝の文が含まれていることによって、お客様も快く受け止める事ができるでしょう。小さなメッセージが大きな防止効果になるのではないでしょうか。
最後に、席の配置換えも重要です。客席はスタッフの目に届く配置にすることをおすすめします。死角ができてしまうと、お客様の異変に気づくことができないなどサービスも不届になってしまう恐れがあるためです。
あなたのお店でも、これらの予防策を取り入れてみませんか?

お店のスタッフ教育が要!?チーム全体で取り組む迷惑客対応
迷惑客対応は店長や経営者だけの問題ではありません。スタッフ全員が適切に対応できるよう、教育することが重要です。
アルバイトの若いスタッフが迷惑客に怒鳴られて泣いてしまうという出来事がありました。その時、私はスタッフ全員に迷惑客対応の研修を行い、マニュアルも作成しました。
その結果、スタッフの自信が高まり、チーム全体の対応力が向上したのです。
効果的なスタッフ教育のポイントは以下の通りです。
ロールプレイング:実際の状況を想定した練習を定期的に行う 対応マニュアルの作成:基本的な対応手順を文書化する 成功事例の共有:うまく対応できたケースを全員で共有する バックアップ体制の構築:一人で対応させない仕組みを作る |
特に重要なのは「一人で対応させない」という点です。迷惑客対応は精神的負担が大きいため、必ず先輩スタッフや責任者がバックアップする体制を作りましょう。
また、対応後のケアも忘れてはいけません。迷惑客対応後、スタッフの心のケアを行うことで、モチベーション低下や離職を防ぐことができます。
「大丈夫だった?」「よく対応したね」という声かけが、スタッフの自信につながるのです。
あなたのお店では、スタッフ全員が迷惑客に適切に対応できる体制ができていますか?
まとめ:毅然とした対応が店舗の評判と利益を守る
迷惑客への対応は、飲食店経営において避けて通れない課題です。しかし、適切な対応ができれば、お店の評判を守り、むしろ信頼を高めることができます。
この記事でお伝えした内容をまとめると
- 迷惑客の典型的なパターンと心理を理解する
- 初期対応では冷静かつ丁寧に、しかし毅然とした態度で臨む
- 状況に応じてエスカレーションし、必要なら法的措置も検討する
- 予防策を講じて迷惑行為の発生を未然に防ぐ
- スタッフ全員が適切に対応できるよう教育・サポートする
スタッフ教育を進める上では、日々のオペレーション改善とも深く関わってきます。スタッフの動きや店舗運営全般を見直すヒントは、マニュアル不要?飲食店オペレーションの新常識とは?の記事で紹介しています。
私は25年間の飲食業界経験の中で、多くの迷惑客対応を経験してきました。その経験から言えることは、「放置しない」「毅然と対応する」ことの重要性です。
迷惑客への対応は確かに面倒で、時には恐怖を感じることもあるでしょう。こうした迷惑客への対応は、クレーム対応全般と重なる部分が多くあります。より体系的に理解したい方はクレームは「宝の山」という発想が飲食店を変えるの記事がおすすめです。しかし、適切に対応することで、他のお客様に安心して食事を楽しんでいただける環境を守ることができます。
そして何より、あなたとスタッフの皆さんが「楽しく」働ける職場を守ることにつながります。
飲食店経営において「楽しくなければ飲食店じゃない!」というのが私の信条です。迷惑客に振り回されず、お客様にもスタッフにも「楽しい」環境を提供できるよう、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
一緒に、強くて愛されるお店を作っていきましょう!迷惑客対応でお悩みの方は、ぜひ飲食業界で25年、「美味しい」と「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー岡本にevisu公式LINEにてご相談ください。
岡本優
飲食店経営伴走型パートナー
もう、一人で悩まない。
あなたの店の「右腕」になります。
利益改善、集客強化、人材育成、オペレーション改善まで、
経営のあらゆる課題に、オーナー様と同じ目線で
共に答えを見つけ出します。
現場力とマーケティング力を掛け合わせた、
evisuだけが提供できる継続的なパートナーシップです。
飲食店の課題の答えは、すべて現場にあります。
私の仕事は、その答えをオーナー様と共に見つけ出すこと。
飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてまいりました。株式会社サッポロライオン「銀座ライオン」にアルバイトにて入社後、ひたすら経営と現場に没頭する中で、新宿店、そして800席を超える銀座本店の総支配人を拝命。
赤字店舗の再建を託される機会も多く、お客様とスタッフ双方の満足度向上を軸としたアプローチで、全ての担当店舗を黒字化へ導いた経験は、私の大きな財産です。
しかし、多くの飲食店が未来に不安を抱えている現状を目の当たりにし、この経験を業界全体のために活かしたいという想いが日に日に強くなりました。そこで2025年、株式会社evisuを設立。25年間現場で培ったリアルなノウハウを、同じ志を持つ経営者の皆様と分かち合い、共に困難を乗り越えるパートナーでありたいと考えております。
「楽しくなければ飲食店ではない」を信念に、皆様のお店が笑顔で溢れる場所になるよう、全力でサポートいたします。
