店舗での忘れ物はすぐに処分すべき?正しい対応と管理法

店舗づくり
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こんにちは!飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー、岡本です!

飲食店を経営していると、お客様の忘れ物は日常茶飯事。スマホや財布といった貴重品から、傘やマフラーなどの身の回り品まで、様々なものが店内に取り残されます。「どうせ取りに来ない捨てちゃおう」と思ったことはありませんか?

実は、忘れ物の取り扱いは「遺失物法」という法律で明確に定められており、勝手な判断で処分すると思わぬトラブルに発展する可能性があるのです

この記事では、飲食店経営者として知っておくべき忘れ物の正しい対応方法と、トラブルを未然に防ぐための管理システムについて詳しく解説します。「お客様の大切なものを守る」という姿勢が、結果的にお店の信頼につながるのです。

お店で忘れ物を見つけたときの正しい対応手順

まず押さえておきたいのは、忘れ物の基本的な対応手順です。遺失物法では、忘れ物は「遺失者(落とし主)に返還するか、警察に届ける」ことが義務付けられています

店舗で忘れ物を見つけた場合、以下の手順で対応するのが正しいやり方です。

1. まずは店舗で一時保管する

お客様が忘れ物に気づいて店舗に連絡してくる可能性が高いため、見つけたらすぐに警察へ届けるのではなく、まずは店舗で保管しましょう。特に飲食店の場合、お客様が気づいて数時間以内に取りに戻ってくることも多いです。

忘れ物専用のボックスを用意し、拾得日時・場所・状態などを記録するノートと一緒に保管。これだけで後々のトラブルが激減します。

2. 忘れ物の内容で判断せず、すべて保管する

レシート、ポケットティッシュ、マスクなど、一見価値がないように思えるものでも、勝手に「不要だろう」と判断して処分してはいけません。物の価値はお客様が決めることであり、私たち店舗側が判断するものではありません。

どんなに小さなものでも、必ず記録して保管するようにしましょう。

ただし、財布や携帯電話などの貴重品、明らかに高価なアクセサリーなどは例外です。これらは店舗での長時間保管はリスクが高いため、見つけ次第すみやかに警察へ届けるのが適切です。

3. 一定期間経過後は警察へ届ける

店舗での保管期間の目安は1週間程度です。この期間にお客様から連絡がなかった場合は、警察へ届けましょう。

忘れ物を警察に届ける際は、以下の情報を明確に伝えることが大切です。

拾得した日時と場所
・忘れ物の特徴や状態
・店舗の連絡先情報

また、どの警察署にいつどのようなものを届けたのか、店舗側でもリスト化して記録しておきましょう。後日お客様から問い合わせがあった際にスムーズに案内できます。

忘れ物の対応って面倒だと感じることもありますよね?

でも、この「面倒な作業」こそが、お店の信頼性を高める大切な要素なのです。

お店での忘れ物・・法的取り扱いと保管期間は?

忘れ物の取り扱いについては、遺失物法という法律で明確に定められています。2025年現在の最新の規定に基づいた正しい知識を持っておきましょう。

遺失物法の基本的なルール

遺失物法では、施設内(飲食店内など)で拾得された忘れ物は、まず施設管理者(店舗)に提出することが定められています。従業員が拾得した場合は、施設管理者(法的には店舗を運営する会社の代表者)が拾得者となります。

施設管理者は、忘れ物の種類・特徴、拾得された日時・場所を、公衆の見やすい場所に掲示するか、これらが記載された書面を備え付け、関係者が自由に閲覧できるようにする義務があります。

保管期間はどれくらい?

忘れ物の保管期間は、原則として警察署での公告日から3か月間です。ただし、2019年の法改正により、一部の物品については例外的に2週間で処分される場合があります


・衣服
・ハンカチ、マフラー、ネクタイ、ベルトなどの繊維製品または皮革製品
・履物
・自転車

これらの物品は、保管コスト削減のため、公告日から2週間が経過すると処分される可能性があります

私が経験した中で、特に冬場のマフラーや手袋、夏場の日傘などは季節商品のため、シーズンが終わると価値が大きく下がってしまいます。そのため、お客様にとっても早めに返還されることが望ましいのです。

報労金(お礼)について

忘れ物を拾った人は、法律上、落とし主から報労金(お礼)を受け取る権利があります。その金額は、忘れ物の価格の5%以上20%以下と定められています。

ただし、施設内で利用者が拾得した場合は、利用者と施設管理者がそれぞれ、忘れ物の価格の2.5%以上10%以下の報労金を請求できることになっています。

実務上は、多くのお客様が自主的にお礼をされますが、店舗側から積極的に請求することはあまりありません。むしろ、忘れ物を大切に保管して返還することで得られる信頼の方が、長期的には価値があるのです。

忘れ物管理システムの構築方法

忘れ物の適切な管理は、単なる法律遵守だけでなく、お店の信頼性向上にもつながります。では、具体的にどのような管理システムを構築すればよいのでしょうか?

忘れ物対応マニュアルの作成

まず必要なのは、店舗内での忘れ物対応マニュアルです。以下の項目を明確に定めておきましょう。

忘れ物発見時の報告ルート
・記録すべき情報(日時、場所、状態など)
・保管方法と場所
・お客様からの問い合わせ対応手順
・警察への届出タイミングと手続き

私が総支配人時代に作成したマニュアルでは、特に「貴重品」と「それ以外」で対応を分け、貴重品は金庫での保管と即日の警察届出を義務付けていました。これにより、高価な忘れ物に関するトラブルが激減しました。

記録システムの整備

忘れ物の記録は、後々のトラブル防止に非常に重要です。最低限、以下の情報を記録しましょう。

🖊拾得日時
🖊拾得場所(テーブル番号など具体的に)
🖊忘れ物の詳細な特徴
🖊拾得者(スタッフ名)
🖊現在の保管場所
🖊警察届出日(届出した場合)
🖊返還日と受取者名(返還した場合)

保管場所の確保と整理

忘れ物を適切に保管するための専用スペースを確保しましょう。理想的には以下の条件を満たす場所がベストです。

📍鍵のかかる場所(特に貴重品用)
📍湿気の少ない場所(カビ防止)
📍直射日光の当たらない場所(劣化防止)
💻整理整頓しやすい収納システム

日付ごとや種類ごとに分類するボックスシステムが効果的です。クリアファイルや透明ケースを活用して、一目で内容物が確認できるようにしておくと便利です。

とにもかくにも、忘れ物の管理は「面倒だから後回し」にしがちな業務ですが、システム化することで効率が格段に上がります。そして何より、お客様の大切な物を守るという姿勢が、店舗の信頼性向上につながるのです。

忘れ物トラブルの事例と予防策

忘れ物に関するトラブルは、適切な対応をしないと大きな問題に発展することがあります。実際にあった事例から学び、予防策を考えてみましょう。

よくあるトラブル事例

ある繁忙期の夜、お客様がブランド物の傘を忘れていきました。スタッフが「どうせ安物だろう」と判断して、他の傘と一緒に雑に保管。数日後、お客様が取りに来られましたが、傘が見つからず、結果的に弁償することになりました。実はその傘、10万円以上する高級品だったのです。

また別のケースでは、お客様がテーブルに置き忘れたスマホを、清掃スタッフが拾得。しかし記録をつけずに事務所に置いておいたため、シフト交代後に問い合わせがあった際に対応できず、お客様に不信感を持たれてしまいました。

こうしたトラブルは、適切な管理システムがあれば防げたものばかりです。

効果的な予防策

忘れ物トラブルを未然に防ぐための効果的な対策をご紹介します。

✅テーブル清掃時の声かけ:「お忘れ物はございませんか?」と一声かける
✅閉店前の最終チェック:座席、トイレ、コート掛けなどを確認する
忘れ物発見時の全スタッフへの共有:シフト交代でも対応できるよう情報共有する
貴重品と思われるものは写真記録:返還時の状態確認のため
忘れ物対応の責任者設定:シフトごとに担当者を決める

特に重要なのは「声かけ」です。お客様が席を立つ際に「お忘れ物はございませんか?」と一言声をかけるだけで、忘れ物の発生率が大幅に減少します。これは私が店長時代に実践して効果を実感した方法です。

忘れ物対応を誤るとクレームに直結してしまうこともあります。実際の現場で効果的だったクレーム対応術については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

飲食店クレーム対応の基本と5つの鉄則|二次被害を防ぐ

忘れ物を減らすための工夫

そもそも忘れ物を減らす工夫も重要です。以下のような対策が効果的です。

✅コート掛けやバッグ掛けの設置:床に置かずに視界に入る場所に
テーブル周りの整理整頓:小物が紛れ込みにくい環境づくり
会計時の声かけ:「お荷物はすべてお持ちですか?」
忘れ物が多い場所への注意喚起:トイレなど

忘れ物対策は、お客様のためでもあり、店舗運営の効率化にもつながります。小さな工夫の積み重ねが、大きな効果を生むのです。

まとめ:忘れ物対応で店舗の信頼を高める

忘れ物の適切な対応は、単なる法律遵守の問題ではなく、お店の信頼性に直結する重要な要素です。この記事のポイントをまとめます。

  • 忘れ物は遺失物法に基づき、適切に保管・届出する法的義務がある
  • 原則として3か月間の保管が必要(一部物品は2週間)
  • 忘れ物管理システムの構築が、トラブル防止と業務効率化につながる
  • 適切な声かけと環境整備で、忘れ物自体を減らす工夫も重要

私が25年の飲食業界経験で学んだことは、「お客様の大切なものを大切に扱う」という当たり前のことが、実は最高の信頼構築につながるということです。忘れ物の丁寧な管理と迅速な返還は、お客様に「このお店は細部まで気を配ってくれる」という印象を与えます。

忘れ物対応を「面倒な義務」ではなく「信頼構築のチャンス」と捉え直してみませんか?

小さな心配りが、お客様の大きな信頼につながります。そして信頼こそが、長く愛される店づくりの基盤なのです。

飲食店経営でお悩みの方、現場の改善点をお探しの方は、ぜひ私にご相談ください。25年の現場経験を活かし、あなたの店舗に合った具体的な改善策をご提案します。

飲食業界で25年、「美味しい」と「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー岡本にevisu公式LINEにてご相談ください。

岡本優

飲食店経営伴走型パートナー

もう、一人で悩まない。
あなたの店の「右腕」になります。 

利益改善、集客強化、人材育成、オペレーション改善まで、
経営のあらゆる課題に、オーナー様と同じ目線で
共に答えを見つけ出します。 

現場力とマーケティング力を掛け合わせた、
evisuだけが提供できる継続的なパートナーシップです。

飲食店の課題の答えは、すべて現場にあります。
私の仕事は、その答えをオーナー様と共に見つけ出すこと。

飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてまいりました。株式会社サッポロライオン「銀座ライオン」にアルバイトにて入社後、ひたすら経営と現場に没頭する中で、新宿店、そして800席を超える銀座本店の総支配人を拝命。

赤字店舗の再建を託される機会も多く、お客様とスタッフ双方の満足度向上を軸としたアプローチで、全ての担当店舗を黒字化へ導いた経験は、私の大きな財産です。

しかし、多くの飲食店が未来に不安を抱えている現状を目の当たりにし、この経験を業界全体のために活かしたいという想いが日に日に強くなりました。そこで2025年、株式会社evisuを設立。25年間現場で培ったリアルなノウハウを、同じ志を持つ経営者の皆様と分かち合い、共に困難を乗り越えるパートナーでありたいと考えております。

「楽しくなければ飲食店ではない」を信念に、皆様のお店が笑顔で溢れる場所になるよう、全力でサポートいたします。

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