飲食店の人件費を下げずに利益を上げる戦略

店舗経営
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こんにちは!現場叩き上げの飲食店パートナー、岡本です。飲食店の経営者として「人件費を削減したいけど、サービスの質は落としたくない」というジレンマに悩んでいませんか?

最低賃金の上昇、人手不足、さらには物価高と、飲食店を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。私が店長だった頃も、常に人件費と売上のバランスに頭を悩ませていました。700席の大型店舗を任されていた時期は、シフト調整だけで一日が終わってしまうこともありました。

しかし、単純に人件費を削減すれば良いという話ではありません。人件費を削減すれば確かに短期的には利益は上がりますが、サービスの質が低下し、長期的には顧客満足度の低下や従業員の離職につながる恐れがあるのです。

では、人件費を削減せずに利益を上げるにはどうすればいいのでしょうか?今回は、私の25年の飲食業界経験から得た、人件費を削らずに利益を上げるための具体的な戦略をお伝えします。

飲食店における人件費と利益の関係について

まずは、飲食店における人件費と利益の関係について正しく理解しましょう。

飲食店の経営において、人件費率は売上に対して約30%が一般的な目安とされています。

食材原価も同じく約30%が目安で、この食材原価(F)と人件費(L)を合わせた「FLコスト」を売上の60%以内に抑えることが、安定経営の鍵となります。

例えば、月商300万円の店舗で人件費率が30%であれば、人件費は月に90万円かかっていることになります。これを25%に抑えることができれば、人件費は75万円となり毎月15万円の削減、年間では180万円の利益アップにつながります。

しかし、ここで重要なのは、単に人件費率を下げることだけを目標にするのではなく、「人件費を効果的に活用して売上と利益を最大化する」という視点です。つまり、人件費を削減するのではなく、同じ人件費でより多くの売上と利益を生み出す方法を考えることが大切なのです。

私が京都で閉店寸前だった店舗の立て直しを任された時、まず着手したのは人件費の削減ではなく、スタッフの配置と業務内容の最適化でした。結果として、同じ人件費でも売上が1.5倍になり、店舗は見事に復活したのです。

では、具体的にどのような戦略で人件費を下げずに利益を上げることができるのでしょうか?

オペレーションの効率化で生産性を高める

人件費を削減せずに利益を上げる第一の戦略は、オペレーションの効率化です。

オペレーションとは、「客の来店」「注文」「調理」「提供」「会計」などサービス全ての流れのこと。これらの動きを見直すことで、同じ人数でもより多くのお客様に対応できるようになります。

オペレーション効率化は、在庫管理や売上管理の改善とも密接に関わります。

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無駄な動きを徹底的に排除する

例えば、来店があるたびにメニューブックと水をテーブルまで持っていく、コーヒーと一緒に砂糖やミルクを別々の容器に入れて提供する…一見するとごく普通のサービスですが、実はかなりの手間がかかっています。

私が新宿で7つの異なる業態が入る大型店舗の責任者だった時、まず取り組んだのがこの「無駄な動き」の排除でした。

具体的には、テーブルにメニュースタンドを設置し、水はピッチャーで提供するようにしました。また、調味料や取り皿などは各テーブルに常備し、お客様が自由に使えるようにしました。

これだけの変更で、ホールスタッフの動線が大幅に短縮され、同じ人数でも以前より30%多くのテーブルを担当できるようになったのです。

テクノロジーを活用した効率化

最近では、テクノロジーを活用したオペレーションの効率化も進んでいます。例えば、テーブルオーダーシステムの導入は、注文時のオペレーションだけでなく、会計やレジ締め作業も省略できるため、ホールスタッフの業務効率化に大きく貢献します。

ただし、何でもかんでも効率化、簡略化…となると店のイメージは悪くなります。大切なのは、効率化しながらも顧客満足度を高める工夫です。

南青山のフレンチレストラン『L’AS』は、効率化を顧客満足に変えている好例です。同店では、カトラリー類全てを各テーブルの引き出しにあらかじめ収納しておくことで、オペレーションの効率化を行っています。お客様からすれば、手間を省かれたというよりも、「珍しくて楽しい!」と感じる方が多いでしょう。

このように、効率化をエンターテイメント化することができれば、売上や話題性アップにもつながるのです。

メニュー構成と価格設定の最適化

人件費を削減せずに利益を上げる第二の戦略は、メニュー構成と価格設定の最適化です。

飲食店の経営において、メニュー開発は単なる新しい料理を考えるだけではなく、店舗のビジョンや顧客のニーズに合わせて、戦略的に行う必要があります。

利益率の高いメニューを開発する

メニュー開発は利益率の改善にも直結します。新メニューを考える際には、原価率や調理効率を見直し、利益率を高める工夫が求められます。

私が福岡で未経験の和食業態の立て直しに挑戦した時、まず取り組んだのがメニューの見直しでした。それまでは職人の技術に頼った手の込んだメニューが多く、原価率は低いものの、調理に時間がかかり回転率が悪かったのです。

そこで、調理時間が短く、原価率も低い「名物」メニューを開発し、それを中心としたメニュー構成に変更しました。結果として、客単価は若干下がったものの、回転率が上がり、トータルの売上と利益は大幅にアップしたのです。

シンプルな材料で高付加価値な料理を提供することで、キッチンの負担を減らしながらも、コスト削減を実現できる場合があります。これにより、効率的な運営と利益向上が期待できます。

季節感とストーリーで付加価値を高める

旬の食材を使用した季節感のあるメニューは、顧客に新鮮さを感じさせ、来店の動機を高める効果があります。

例えば、春には山菜、夏には冷製料理、秋にはキノコ類、冬には鍋料理など、四季に応じた料理を提供することで、「その時期だけ」の特別感を演出できます。

また、メニューにストーリーを付けることで、同じ原価でも付加価値を高めることができます。例えば、「シェフが朝市で見つけた新鮮な魚介を使った本日のパスタ」といった形で、食材の調達背景や調理へのこだわりを伝えることで、お客様は価格以上の価値を感じてくれるのです。

あなたのお店だけの「物語」を持つメニューは、価格競争に巻き込まれることなく、適正な利益を確保できる強力な武器となります。

スタッフの育成と適正配置で売上を最大化

人件費を削減せずに利益を上げる第三の戦略は、スタッフの育成と適正配置です。

飲食店には必ず、ピークタイムとアイドルタイムがあります。それぞれの時間帯の売上や集客の傾向などを分析し、適切な人員配置をし直すことも人件費削減において非常に大切なポイントです。

ピークタイムに合わせたシフト調整

まずはピークタイムに合わせて、スタッフのシフトを細かく調整してみましょう。もし1日30分の削減で人件費を500円削減できるとしたら、20人のスタッフがいれば1日1万円、月に30万円の削減になります。

私が大阪の店舗で店長をしていた時、徹底的に時間帯別の売上分析を行い、15分単位でのシフト調整を実施しました。例えば、ランチタイムは11:45〜13:30に集中していたため、その時間帯に人員を厚く配置し、前後の時間は最小限の人員で対応するようにしたのです。

結果として、同じ総労働時間でも、忙しい時間帯にしっかりと人員を配置できるようになり、サービスの質を落とすことなく効率的な運営が可能になりました。

マルチタスク化でスタッフの生産性を高める

スタッフ一人ひとりの生産性を高めることも重要です。特に、一人で複数の業務をこなせるマルチタスク人材を育成することで、少ない人数でも効率的な運営が可能になります。

例えば、ホールスタッフにドリンク作りのスキルを身につけてもらう、キッチンスタッフに簡単な接客対応ができるようにトレーニングするなど、部門を超えたスキルアップを促進することが大切です。

私が東京で任された新宿の大型店舗では、全スタッフに最低3つの業務をマスターしてもらうという方針を立てました。最初は抵抗もありましたが、スキルアップによる時給アップというインセンティブを設けたところ、多くのスタッフが積極的に新しい業務にチャレンジするようになりました。

結果として、突発的な欠勤や予想外の混雑にも柔軟に対応できる強いチームが作れただけでなく、スタッフのモチベーションアップにもつながったのです。

顧客単価と回転率を高める販売戦略

人件費を削減せずに利益を上げる第四の戦略は、顧客単価と回転率を高める販売戦略です。

飲食店の売上は「来客数×客単価」で決まります。同じ人件費でより多くの売上を上げるためには、この二つの要素を高める必要があります。

アップセルとクロスセルで客単価アップ

アップセルとは、より単価の高い商品を勧めること。クロスセルとは、関連商品を追加で購入してもらうことです。

例えば、「通常サイズのビールと同じ価格で大ジョッキにアップグレードできます」(アップセル)、「このパスタには、ガーリックトーストがよく合いますよ」(クロスセル)といった提案です。

私が銀座本店の総支配人を務めていた時、全スタッフに「一組につき必ず一つはおすすめ商品を提案する」というルールを設けました。最初は戸惑いもありましたが、「押し売りではなく、お客様により楽しんでいただくための提案」という意識付けを徹底したところ、自然な形でのアップセル・クロスセルが定着し、客単価が約15%アップしたのです。

あなたのお店でも、スタッフの接客トークを少し工夫するだけで、客単価アップが期待できると思いませんか?

回転率を高める工夫

回転率を高めるためには、オペレーションの効率化だけでなく、お客様の滞在時間にも注目する必要があります。

例えば、ランチタイムには「15分以内に提供」を保証するスピードランチを用意する、会計をテーブルで行えるようにモバイル決済を導入する、混雑時には「おすすめセット」を前面に出して注文の迷う時間を減らすなどの工夫が効果的です。

私がキャリアをスタートした会社の象徴でもある銀座本店では、ランチタイムの回転率を上げるために、「10分以内に提供できるメニュー」を開発し、メニューの最初のページに配置しました。また、会計時の待ち時間を減らすため、テーブルごとに専用のモバイル決済端末を用意したのです。

これらの施策により、平均滞在時間が約15分短縮され、ランチタイムの回転率が1.2回転から1.5回転に向上。結果として、同じ席数・同じスタッフ数でも25%の売上アップを達成できました。

回転率を上げることは、必ずしもお客様を急かすことではありません。むしろ、スムーズなサービスによってストレスなく食事を楽しんでいただくことが、結果として回転率の向上につながるのです。

まとめ:人件費は「コスト」ではなく「投資」と考える

今回は、飲食店が人件費を削減せずに利益を上げるための戦略をご紹介しました。

最後に強調したいのは、人件費は単なる「コスト」ではなく「投資」だということです。優秀なスタッフを適切に配置し、教育投資を行うことで、売上と利益の最大化につなげることができます。

まとめると、人件費を削減せずに利益を上げるための4つの戦略は以下の通りです。

  • オペレーションの効率化で生産性を高める
  • メニュー構成と価格設定の最適化
  • スタッフの育成と適正配置で売上を最大化
  • 顧客単価と回転率を高める販売戦略

これらの戦略は、私が25年の飲食業界経験の中で実際に試し、効果を実感してきたものです。もちろん、すべてのお店に同じように当てはまるわけではありませんが、あなたのお店の状況に合わせてアレンジし、取り入れていただければ幸いです。

人件費を削減するのではなく、同じ人件費でより多くの価値を生み出す。それこそが、持続可能な飲食店経営の鍵なのです。

一緒に、強くて愛されるお店を作っていきましょう!

何か質問や相談があれば、いつでも飲食業界で25年、「美味しい」と「楽しい」を追求し続けてきた飲食店経営伴走型パートナー岡本にevisu公式LINEにてご相談ください。

岡本優

飲食店経営伴走型パートナー

もう、一人で悩まない。
あなたの店の「右腕」になります。 

利益改善、集客強化、人材育成、オペレーション改善まで、
経営のあらゆる課題に、オーナー様と同じ目線で
共に答えを見つけ出します。 

現場力とマーケティング力を掛け合わせた、
evisuだけが提供できる継続的なパートナーシップです。

飲食店の課題の答えは、すべて現場にあります。
私の仕事は、その答えをオーナー様と共に見つけ出すこと。

飲食業界で25年、お客様の「美味しい」とスタッフの「楽しい」を追求し続けてまいりました。株式会社サッポロライオン「銀座ライオン」にアルバイトにて入社後、ひたすら経営と現場に没頭する中で、新宿店、そして800席を超える銀座本店の総支配人を拝命。

赤字店舗の再建を託される機会も多く、お客様とスタッフ双方の満足度向上を軸としたアプローチで、全ての担当店舗を黒字化へ導いた経験は、私の大きな財産です。

しかし、多くの飲食店が未来に不安を抱えている現状を目の当たりにし、この経験を業界全体のために活かしたいという想いが日に日に強くなりました。そこで2025年、株式会社evisuを設立。25年間現場で培ったリアルなノウハウを、同じ志を持つ経営者の皆様と分かち合い、共に困難を乗り越えるパートナーでありたいと考えております。

「楽しくなければ飲食店ではない」を信念に、皆様のお店が笑顔で溢れる場所になるよう、全力でサポートいたします。

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